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05
目を開けると太陽の光が差し込んでいる見覚えのない、真っ白な部屋だった。

背中で感じるふわふわ感と体にかかってる少しの圧迫感はベッドにいるんだとわかった。遠くの方から子供特有の高い声が聞こえていて、まだくらくらする頭を持ち上げてると窓から見知った演習場が見えた。ぼすん、と力を抜いて枕に頭を落とすと鈍い痛みが襲う。痛い痛い痛い…。


風景からしてアカデミーの保健室なのかもしれない、と予測。

えっと…、サスケに砂隠れのお土産を渡した後すぐに意識をとばしたからサスケが運んでくれた……、いやイルカさんあたりかな。ああでもサスケが運んでくれてたなら良いなあ。


とりあえず、この2日酔いをなんとかせねばならないのでどうしようかと考える。まず第一に人の気配がどこにも感じられないからして何故保健の先生がいないのかが謎だ。いないのは職務放棄…? まあいないはいないで良かったんだよね。私は基本師匠かシズネさんか自分で調合した薬しか飲まないし。ってことでカカシさんちでは水飲んでアルコールを薄めたけど薬は調合してこなかったというより調合できる気力がなかったし、カカシさんに手伝ってもらうのは(失礼だけどもし何か混ぜられたら)嫌だったし、何より一番頼りになる"相棒"が不思議なことに私がいくら呼んでも応答がない。まるで深い眠りについてるかのよう…。


でも私は諦めずにもう1度、数ヶ月ぶりにあの名前を呼ぶことにした。応答なしとか相棒が(大袈裟すぎるが)死にそうなのを放置するのは許さないんだから…! 呼んで胃腸薬調合してもらわないと困る!!



『(ひーちゃーん…! ひーちゃああん…っ! 、緋前‐ヒゼン‐ッッ!!!)』



心の中で必死に叫んだ。



……過去に1人ぼっちなんて嫌だ―。
















―…そんなに呼んでどうした。



数ヶ月ぶりの懐かしい声が頭の中で響いて、ちょっぴり涙腺が緩んだ。


*

緋前。通称ひーちゃん。
私が物心つく前から体内に封印されている猫又であり大切な相棒。珍しく尾が3本あるが、ひーちゃんの自慢は尾が3本あることとそれらがふわっふわなこと。



「次からは飲みすぎないこと」

『…本当に助かった』



私のチャクラを使い人型として外に出てもらったひーちゃんに、保健室にある薬品で指示を出しながら薬を作ってもらい飲ませてもらった。少しベッドで横になっていればもう大丈夫だ。なんせ2日酔いで動けない師匠に調合していたのは私だからね。(ただ今回はあるものを調合したから効力は劣ると思うけど…)


金髪で毛先が茶色というプリン色、高くひとつに結い上げた髪は腰まである人型のひーちゃんはベッドの縁に座って腕を組んだ。口に出さなくても"なんで鳴莎は縮んでいるんだ説明しろ"と雰囲気で伝わってくる。私だってなんでひーちゃんが今まで応答がなかったのか説明していただきたいのですが。



『今ね、アカデミーに通ってるの』

「色々説明不足」

『ひーちゃんこそ何してたの?』

「話を逸らすんじゃない」



ああ久しぶりの会話だ…! と感動しつつ、いままであったことを話した。


サスケが里抜けしてから師匠と修行して1年、その後は独自で修行しようと里を出て半年が経った頃。そこまではひーちゃんも覚えているようで相槌を打って聞いてくれている。問題はそこからで、いつものように修行していたらいつの間にか木の葉の火影邸の屋上に立っていた私。そこから見える火影の顔岩を暫く見て、目が点になった。本来ならばそこには5つなければならない筈が何故だか師匠の分を抜いた4つしかなくて、いくら目を擦っても顔岩が増えることはなかったこと。

眉を寄せて聞いているひーちゃんを見ながら私は話を続ける。

私は急いで火影邸で暗部に気づかれずに確認をした。驚くことにそこにいたのは師匠じゃなくて、お亡くなりになった筈の…3代目だったこと。私はひとまず彼等の先生、カカシさんちに訪ねに行った。


そこで、なんでアカデミーにいるんだ、とひーちゃんから言われて説明を足す。



『それはね、ほら、サスケは里抜けしたじゃない。その時私はサスケを止めはしなかったでしょ。それはサスケが復讐したい気持ちが理解できたから。

……でも今は違う。

今の私は真相を知ってる。だから多分里抜けするだろうサスケに言ってやりたい言葉がある。それに、今まで傍にいてやれなかった分を少しでも埋めたいから』

「……自己満足の為か」

『普通に考えればこんなチャンス、廻ってこないよ。だから私は利用しただけ』



ふん、と鼻で笑ったひーちゃんは小さな球体の光になって私の体へと戻っていった。すると保健室に向かってくる足音が聞こえてくる。ドアを開けたのは心配顔のイルカさんだった。



「気分はどうだ?」

『もう大丈夫だよ、先生』



ベッドから体を起き上がらして片腕を何回か回した。元気だということを示す。

一緒にクラスに戻ることになってイルカさんの後ろを歩いていると、私は肝心なことを思い出した。



まだひーちゃんの話を聞いてないことに。




(あんのッ!!)
(どうした?)
(あ、いえ、なんでもないです)


(お土産、ナルトに忘れずに渡さなきゃ)
(帰りに薬草買って帰ろ…)


 
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