01
満月の淡い光りが辺りを照らし、夜でも比較的明るい。
そんな夜の事、里の大きく"あん"と書かれた門の前で暗部服に動物のお面を付けた男女が言い争いをしていた。勿論小声で。
『いいじゃない!偶には!』
「だからってカカシ先輩が許すつもりないだろう?!!」
女は狐の面を被り、左肩を露出させている暗部服で右肩は隠すようなつくり。男とは頭1個分半くらいの身長差があり、赤茶色の長い髪はひとつに纏め、腰に木の葉だという証の額あてをつけている。
『そもそもね、ちゃんと3代目のじいちゃんから許可貰ったの』
「…そりゃあ僕だってわかってるよ。火影様に"集合場所にいるもう1人と一緒に行きなさい"って言われたからね。でも、」
まだ言うか!、と心の中で叫びながら自分のつけている狐の面を見せ付けるように背伸びした。
『カカシさんにも言われた通りやることはやってるんだからいいんだって!もう!こんなことしてると任務行けない!早く済ませましょうよテンゾウさん!!』
「確かにそれは正論だ。けどね、何かあって言われるのは僕なんだよ」
彼女、鳴莎はカカシの後輩であるテンゾウの後半部分を聞かなかったフリで先に目的地へと地を蹴る。それにため息をついてテンゾウも素早く追いついていった。
*
3日後、途中山賊と会いそうになったが上手く避け、他の忍にも会うこともなく無事目的地に着いてその里の長の風影へと巻物を渡した。
テンゾウさん曰く、2年に1回行われる中忍試験の内容かもしれないとのこと。
木の葉に全国の下忍を集めるんだし半年も前から準備し始めるのもわかる気がするけど、もう"こっち"に来てから数ヶ月は経つのか。早いなあ…。
変化の術で容姿と体を小さくしてアカデミーに通ってる私は、最初は居候の身であった為に変化を解いて暗部などの任務をこなして自分の生活費を稼いでいたが、アカデミーの方が疎かになっていることを指摘され今では真面目に通っている。その所為で今度はためてきた生活費が底をつきそうになり、3代目に頼み込んで今回の任務につかせてもらった。
カカシさんは気にするな、って言ってくれてるけど居候の身なんだから気にするし!
ちなみにつけている狐の面はカカシさんが暗部時代に使っていたものを使わせてもらっている。テンゾウさんとは偶に任務で一緒になったり、ちょっとした酒飲み仲間。まあカカシさんを通じて仲良くなった感じだ。カカシさんはあんまりお酒に付き合ってくれねいからテンゾウさんと飲んでるけど、テンゾウさんも一緒にいるだけでそれほど飲まない。その都度、師匠と飲みたい衝動に駆られるけど我慢している。だって師匠の傍にはこの時代の私がいるから会うと多分色々とヤバイと思う。
『お土産、何がいっかなー』
「早くしてね」
『わかってますよー』
まずはお世話になってるカカシさんにー、クラスの子とみせかけてサスケとナルトの分でしょー、後は3代目と自分用でいいかな。
指を折りながら誰に買っていくかを決める。
『テンゾウさんは買っていかないの?』
「僕? そうだね、別に要らないかな」
『ふーん』
私服姿の私達は夜でも観光客で賑わっている場所を歩いている。
砂隠れの特産物は木の葉と全く地形が違うからか目に惹かれるものばかりだ。
物と食べ物を選ぶなら食べ物の方が喜ばれるかなと考え、無難にお饅頭と煎餅を買っていくことにした。
あ、あのお団子美味しそう!