02
「めぇーいぃー!!」
『なぁーにぃーっ?』
「…近くにいるんだから普通に話したらどうだ」
幼い男の子とその子より2つ上の女の子、それと男の子の兄の少年が里が見渡せる丘の上に来ていた。女の子と男の子は里に届く気持ちで口に両手をそえて叫んで会話をする。
3人は手裏剣の投げ方を練習するために人気のないこの丘に来ていた。今は休憩中で休んでいたところ。木に寄りかかり、呆れながらも暖かい眼差しで見ている少年、イタチは静かに可愛い弟達の会話を聞くことにした。
『次のしょーぶにはぜったいかってやるーーー!』
「めいにはぜったいまけねぇぞーーー!」
『いったなさーちゃん!』
「さーちゃんゆうな!」
声が響くのを多分面白がっていたのだろうが、途中から言い合いになってきた。だが、ライバル意識があれば自分がただ教えるよりかは上達が早いと思ってかイタチは止めはしない。2人は休憩中なのにも関わらず走って練習の場所に戻り、定位置に着いた。そして同時に(木の幹に紙を貼り付けた簡易的な)的に向かって手裏剣を構える。
『3枚でしょーぶね』
「わかった」
男の子、サスケの合図をきっかけに女の子、鳴莎も的にイタチのアドバイスを思い出しながら手裏剣を3枚投げる。が、投げ終わると隣の的と自分の的を見比べて落ち込んだ。2人ともまだ中心には刺さらないが、サスケの的は自分より少し中心寄りに刺さっていたのだ。今日1日でかれこれ何回挑んで何回負けているのか。思うように中心にいかない。…サスケより2年は長く生きているのに。お姉さん、という立場からするとプライドが…。
「へへっ、またおれのかち!」
『もー!サスケ何かずるしてるんじゃないの?!』
「じつりょく、だよ」
『うわーむかつく!』
そろそろ本格的に喧嘩に発展しそうな2人のところに休憩を止めたイタチが割り入った。
「サスケ、鳴莎。手裏剣はそこまでにして次は体術だ。2人で来ていいぞ」
聞くや否や一瞬にして2人の目の色が変わった。
けして毎日イタチと一緒に修行をしているわけじゃない。イタチはすでに下忍でありいつも任務に出向いてるが、今日は偶々非番でこうして3人でいられるだけなのだ。そのため普段手合わせ出来ないイタチと出来るとなれば2人は喧嘩をしている場合ではない。
「ごめん、ちょっといいすぎた」
『だいじょーぶ。わたしもごめん』
「俺に少しでも触れられたらご褒美があるからな」
すぐに仲直りすると2人は手裏剣をしまって構える。言い切るのと同時に地面を蹴って左右にわかれ、イタチの両脇から攻めて行く。イタチも4歳と6歳相手に本気は出さないが、かわしながらアドバイスを入れたり軽く投げ飛ばしたりする。アドバイス通りに動けるようになってくるとわざと隙をみせ、サスケよりいち早く気づいた鳴莎がイタチに蹴りを入れて掠った程度に触れた。
『はあ…っ! やったあ!』
「うん!」
鳴莎とサスケはハイタッチをかわして、息を切らしながらも笑いあった。
きりのいいところで夢から覚めると自分の前に誰か立っている気配がした。
でもこの肌寒い感じはつい最近感じたことのある記憶が…。
あげたくはないんだけどあげなきゃいけない気がして恐る恐る顔をあげてみると、
「あぁ〜きぃ〜らぁ〜…」
顔を引きつらせて、どでかい怒りマークが見えるイルカさん。
これって昨日と同じパターンきたあああああ!!!
『…、……おおおはようゴザイマ、』
3限目の授業中にイルカ先生の怒声がアカデミー周辺に響きわたったとか。