04
『あった、あった! ラスト2パック!!』
どこに連れて行かれるのと思えば俺も買いに来てるスーパーで、コイツは途中から走り出し向かった先は卵売り場。そして何故か俺に1パック手渡された。これ、俺に買えってか? でもさっき奢ってもらう気はないって言ってたしな…。
「これをどうするんだ」
『どうって、"お1人様1パック"だから持ってくれ』
「……」
他に何があるんだ?、と言いたげな顔しやがったコイツむかつく。
『卵きらしててさー。安売りの日なのに説教とか一番最悪だったけど、あったから運良かったよ!あはは!』
笑いながらレジへと軽やかに進む怪しいアイツを見てそれから手元に目をやった。
―売り切れていれば良かったのに。
有無を言う前に持たされた卵を見て静かな怒りをぶつける。卵相手にぶつけたって仕方ないのはわかるが。
嫌々ながらもレジへと向かうアイツについて行き、先に着いていたアイツが置いた卵の隣に置いて、俺はこれで帰れると思いレジを通り抜けようとした。
『そうだサスケ、夕飯食べていかないか?』
は? 急に何を言い出すんだコイツは。
支払いを済ませながら言うコイツにはもうつきあいきれない。
「ふざけるな。断る」
*
サスケにもの凄い恐い(苛ついた)顔をして断られてしまった。
へそを曲がらせて帰ってしまったサスケの背中を見つめながら、店員さんから卵2パックの入った袋を受け取る。
『覚悟はしてたけど、やっぱり冷たいなぁ…』
店員さんが、何ブツブツ呟いているのこの子。みたいなイタい目で見てくるのを無視してレジを出る。私はお店から出ずに知ってる気配がする方へと足を向ける。サスケと一緒にスーパーに入る前あたりからいる人。まだサスケはあの人の生徒じゃないから知らないのも無理ない。
野菜コーナーに行くと、ニラを選んでいるカカシがいた。一旦家に戻ったみたいでラフな格好をしていたが、相変わらず鼻まで隠すマスクはしている。
「今日は遅かったじゃない」
『カカシさんも来るなら私来ることなかったじゃん。明日どうしようサスケ怒ってた!!けど可愛いっ!!』
「どっちなのヨ…」
カカシは色々話が抜けてる鳴莎にツッコミを入れても流され、丁度卵も買ったし今夜は親子丼でいいかぁ。と勝手に話を進める少年に溜め息をつく。
仕方なくカカシは近くにあった三ツ葉を手に取りカゴに入れ、いつの間にか鶏肉を取りに行っていた鳴莎から鶏肉を受け取り、レジに進む。
「うちはの子と何かあったの?」
『卵2パック買う為に連れてきたら怒って帰った』
2度目の溜め息。
差し出されたビニール袋をみれば確かに卵のパックが2つ。店員さんに同じ袋に入れて下さいと一言いって、買い足したものを入れてもらってスーパーから出る。
カカシの後ろを歩いていた鳴莎は空を見上げた。もう日は暮れていて、オレンジ色から藍色へと綺麗なグラデーションになっている。藍色の部分では月と幾つかの星が見える。
『はぁ……』
同じ空。
あの日も、私が知ってる先の日々を過ごした空と何も変わらない。
ただ環境が全く違うだけ。
変わらないものと、変わるもの。
傷は深く、
代償も大きく、
今から私がすることが無駄にならないように、
―また昔のように…。
(そういえばそのポーチ、どうしたの?)
(あー、ついにイルカさんにサボりが知られた)
(影分身は?)
(…ダシワスレタ)
(ありゃま)
(……燃やしてもいいかな)