高尾と緑間とはよく一緒にいるけど、決していつも一緒にいるというわけではない。私にだってあの二人の他に喋ったり食事をとったりする友人はいる。それはもちろん高尾にも緑間にも当て嵌まることで、私以外の友人と話すことも至極当たり前のことなのだ。
チャイムが鳴って授業が終わるとともに、教室の中が一気に騒がしくなった。十分の休み時間に入ったことを知らせるそれにつられて、大きく伸びをする。それから自分の汚い机を見る。散らばったノートや筆記用具の隙間から消しかすが見え隠れするのはいつものことだった。こういうところで性格が表れるんだよなあと、物静かで几帳面な友人の机に目をやった。私の机とは正反対のその机は、ノートがきっちりと並べられていてとても綺麗だ。私の机がああいう風に綺麗になることは多分なさそうだ。半ば諦めながら上に乗ったものを片付ける。机の上同様、整理整頓されていない机の中に教科書を突っ込んでいると、大きな声で名前を呼ばれた。
「山本ちょっとこっち来いよ!」
にこにこと人懐っこい笑みを浮かべてこちらを見る高尾は、どうやらまた緑間をからかっているようだった。
「なに?」
「いやー昨日真ちゃんがよー」
「うるさい黙るのだよ高尾」
ケラケラ笑う高尾に感情を顕わにする緑間。それから高尾と一緒になって緑間をからかったり、二人のやり取りを見たりする私。集まればこの関係ができるのはいつものことで、私はとてもここにいるのが好きだった。
「ねえねえー高尾ー」
そんなことを思いながら高尾と緑間のやり取りに笑っていたところに、間延びした高い声が入ってきた。高尾を呼ぶその声の主は髪の明るい女子だった。ケラケラと変わらない様子で話す高尾は、女子のちょっと高尾借りてくねーという言葉により女子が作る輪に借り出された。
「おい、山本」
「へ、なに?」
「……目が怖いのだよ」
しばらくの間緑間と何も話さず、無意識に私はあの輪を見ていたらしい。ごめん。そう一言謝って緑間の方へ向き直る。緑間はそれに対しては何も言わず、目を少しだけ伏せながら次の授業の準備をし始めた。緑間と授業やもうすぐ始まる期末テストについて少し会話をしながらも、私の意識は違うところにいっていた。
高尾はだれとでも話すことのできる気さくな性格だ。それゆえに友達は多い。さっきのように途中で抜けたり、他の人と喋っていることなんてしょっちゅうある。高尾がそうして他のだれかと会話をすることは当たり前のことなのに、何故か最近そういう光景を見ると少し悲しく思ってしまう私がいる。
「たっだいまー!お、テストの話?」
話が終わったらしく高尾が帰ってきて、また三人の会話が始まる。楽しそうに笑う高尾に私も笑った。だけれど、そんな表情とは裏腹に心の中は穏やかではなかった。さっきの高尾と女子の姿が頭に焼き付いて離れてくれない。なんで。頭を何度フル回転させても出て来る答えは一緒だった。なんで嫉妬なんか。少しずつ顔に熱が集まってくるのを必死でおさえながら頭を抱えた。最近の私は高尾のことで悩んでばっかりだ。

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