※not SSL


いつものように忽然と姿を消した幼なじみを探しに私は歩き出す。自由気ままで、人懐っこくて、だけれど少し意地悪なまるで猫のような彼を見つけ出すのは昔から私の仕事だ。剣道の道場で近藤さんに叱られて庭の隅で蹲っていた時も、彼が少しの間入院することになり河原で落ち込んでいた時も、全部私が彼を見つけ出したのだ。
いつだったか、彼は空とか雲が好きなのだと言っていたことがある。そんな彼だから今日はどうせ中庭のベンチか立入禁止の屋上に寝そべって空を見上げていることだろう。先日は中庭のベンチで子猫と戯れていたから私の予想が外れていなければ、今日は屋上にいるはず。そう思って屋上へ向かってみれば案の定空を見上げて寝そべっている彼がいた。


「沖田」

「空ってさ変わらないよね」


名前を呼べばそう唐突に話し出した幼なじみの隣に寝転がり、同じように空を見上げながら話に耳を傾ける。


「僕にどんなことがあろうと、いつでも僕らを見下ろしている」


一つ溜息を吐いて、変わらないんだと呟いた沖田の横顔を盗み見れば、悲しげな表情をしていた。
澄んだ青色を目に焼き付けてから目を瞑る。優しい声で、どうしたの?とは聞かない。聞いたところでむこうははぐらかすに決まっているから。いや、私が、私達が聞けないだけなんだ。
私達の間には、いつしか一枚の壁が出来ていた。それはお互いの侵入を防ぐためのもの。今みたいに沖田の心のうちに深く入り込まないようにしたり、名字で呼んだり、一歩引いて私達は接している。
正直、関係を変えようと思ったことがないわけじゃない。壁があるせいで苦しんだこともたくさんあるし、今だって本当は少しでも沖田の役に立ちたいと思っている。
だけど、それをしないのは、無闇矢鱈に踏み込んで相手を傷付けたり、男女の間に成り立つ厄介な感情を持ったりして、幼なじみという関係が崩れることが何よりも怖いから。


「そろそろ帰ろっか」

「そうだね」


うんと背伸びをしてから、立ち上がりもう一度空を見上げてみる。もやもやした私の気持ちなんて吹き飛ばしてしまうくらい綺麗な空は、まるで私達の関係を表しているようだった。


万古不易


素敵な企画、四字熟語博士様に提出させて頂きました。
110824
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