ふわり、と甘い匂いが鼻を擽る。 坂を勢い良く下る総悟の背中にしっかりとしがみついて顔を覗かせれば、見えたのは晴れ渡った空と真っ黄色な向日葵畑。 昔から何も変わらないこの向日葵畑は、私達の思い出の場所である。向日葵の背丈を利用してかくれんぼをしたり、悲しいことや嬉しいことがあった日もここへ来ては2人でそれを分けあったりした。今日ここへ来たのもちゃんとした理由があるからだ。 自転車から降りて吹き抜ける爽やかな風の音をBGMに、大分縮まったがまだ自分達よりも背の高い立派な向日葵達を眺める。 「総悟」 「何でィ」 「来年もこうして祝わせてね」 「……おう」 この向日葵畑が変わらないように、私と総悟の関係もこのままずっと変わりませんように。 向日葵に見守られながら、私はそっと目を閉じた。 Sougo Okita 110708 |