Target3、4 笹川 京子、黒川 花
本日10月31日は暦上学生の大好きな休日に当たる日である。
そんな日に京子と花は出掛けていた。
むろん、蒼空を誘ったのだが用事があるとのことで朝に誘いを断られてしまったのだった。
故に今日は二人で遊びに行くのである。
「蒼空予定が入ってて残念ね」
「うん、遊びたかったなぁ…」
「ま、次は遊べるよう早めに準備しましょう」
「うん!」
最近ようやく遊ぼうと言っても断られることが少なくなったので、ショックの割合が大きい。
しかし、彼女にも予定というものが存在する。
故に無理に誘うわけにもいかないのだ。
だからこそ深くは気にしないようにしている。
今もこうやって前向きに考え、決して遊びたくないがために断られたのではないと思っているのだ。
−−そしてその思いは通じたのは言うまでもない。
「京子ちゃん!花ちゃん!」
「あ!蒼空ちゃ…」
「蒼空じゃない!どう…」
だが、振り向いた瞬間に今日は遊べなかっただの、今偶然会えたなどという思考をぶっ飛ばすような出来事が起きた。
確か、京子と花の記憶の中には蒼空は優等生とある。
それも真面目を絵に描いたような人物でもあり、けっしてこのようなことをするよう人物ではないと思っていた。(というよりは、今もなお思っているのだが)
それなのに振り返ったらどうだ。
固まり、なんて言葉を発したらいいのかわからないような事柄が起きている。
なぜなら、誰も予想していなかっただろう。
「Trick or Treat!!」
彼女が魔女の格好をして京子と花の前に現れるとは…。(しかし、京子には嬉しいこととは言わずもがなである)
なぜか引き攣ってしまう頬。
そして目眩までする。
だからこそ言わせてほしい、一体なにがあったんだ!!と。
「蒼空…あんた…」
「きゃああああっ!!!!蒼空ちゃんかわいいっ!!!」
「えっ…あの…」
「本当にかわいいよ!!!どうしたのその格好!!似合ってるよ!」
「あ、ありがとうございます…そ、その」
まくし立てるようにして早口に京子は話し出す。
それも花の言葉を消してしまうほどにだ。
当然花も少しくらいは苛立つが、いつものことだと思えば苛立ちもなくなる。
今なお蒼空を褒めちぎる京子に呆れつつ視線を送るが、京子も褒められている蒼空もそれには気がついていない。
これもまた、いつものことなのである。
しかしながら、今日は蒼空が初めてコスプレをして京子たちの前に現れた日だ。
いつも以上に京子の幸せメーターが上がっている。
そのためか、あまりにも褒めちぎられるせいか蒼空の顔も次第に真っ赤に染まっていく。
それを見ていた花は呆れ半分、救いの手半分で動いた。
「はいはい京子そのくらいに」
「えー!!」
「とりあえずあとでめいいっぱい褒めちぎって」
「わかったよ…」
「で、蒼空はなんでそんな格好してるの?」
「そ、それは…その…」
京子を無理矢理落ち着かせ、なんとか話し始めた花。
しかし、蒼空も話しを振られて思わず固まっている。
理由を言おうにも内容が内容なだけに情けなくて言えない。
そんな蒼空の様子に京子も花も互いに顔を見合わせて首を傾げるばかりだ。
「どうしたの蒼空ちゃん?」
「えーと、あの…」
「…ああ、もしかして居候のあのガキんちょが原因?」
「う…」
言いにくそうに口ごもる蒼空を見て直ぐさま花は直感した。
あの居候のガキだと。
最近よく蒼空の口から聞く、蒼空の家で預かっている居候の子供。
その子供が蒼空で遊んでいるというのは、何となく花も蒼空の言葉の節々で感じ取れている。(ここで「蒼空と」や「蒼空と一緒」にならないのは彼女もリボーンの性格がなんとなく掴めているのだ)
ため息をつきながら思うのは、蒼空の家に来た居候のせいで蒼空が変な道に進んでしまったらどうしてくれるのか、である。
残念ながら変な道という道に進んでいないが、彼女−−沢田 蒼空はマフィアへの道を進んでいた。
それは花も京子も当然知らない。
知ったら知ったで発狂するのは目に見えているので言わないことにしよう。
「はぁ…大方ハロウィンを楽しもうみたいなことでしょ、その衣装」
「うん…」
「さっきの台詞を聞いたら納得できたよ」
「はは、なんだかごめんなさい」
「いいよ、お菓子今あげるから」
「! ありがとう!」
「私もあげるよ蒼空ちゃん!」
「ーっ!二人とも本当にありがとう!」
勘のいい花には何故蒼空がそんな格好をしているのか、簡単に理由が想像できた。
あらかた予想していた内容を混ぜながら話してみれば案の定だ。
そして自分のバックの中には夕方蒼空にあげるつもりだったお菓子も入ってるので素直に差し出す。(京子も同じように持っていたので差し出すが、蒼空のいたずらもいいなーと思っていたのは花しか知らない)
歓喜のあまり普段見せないような安堵した蒼空を見て、よほど大変なのだと感じたのも彼女たちの秘密であった。
「あ!あとで私の家に来てもらってもいいですか?」
「えぇ、行くわ」
「うん!行くね!」
「ありがとう!じゃあまたあとでね!」
手を振りながら花と京子に貰ったマドレーヌを大事そうに持って走っていく蒼空。
自然に顔を見合わせながら花と京子はどちらともなく笑った。
−−やっぱり私たちは親友だ!
思うことは二人とも一緒である。
Target3、4 笹川 京子、黒川 花−終了。