険悪な雰囲気に蒼空はおどおどするしかなかった。
そんな蒼空を挟み睨みつける彼らは−−酷く真剣である。


「10代目は今からオレたちと出かけるんだよ」

「ししっ、なに言ってんの?王子たちとの間違いじゃないの?」

「それはないのなー。なんたってオレたちが先に誘ったんだから」

「う゛ぉ゛おおいっ。先とか後とか、んなの関係ねーぞぉ」

「大有りですよ。優先順位というものを君達は知らないんですか?」

「知っているとも。けど決めるのは蒼空だろ?僕はそれが一番大事だと思うよ」


その言葉を聞いて更に両者の間にて火花が散る。
普段ならば大声で叫ぶところが、怒りが強い為に静かに言い合いをする。
そんな様子が更に蒼空の不安を煽る。
ことの発端は守護者全員と蒼空が珍しく遊ぶ日を設けていたことだ。
それを聞き付けた(またの名をストーカー行為という)ヴァリアーたちは直ぐさまに行動をおこしたのだ。

約束の日。
蒼空が守護者を待っている最中に彼らは現れた。
初めは蒼空も驚いていたが、旅行しにきた為と言ったら直ぐさま彼女の顔は笑顔に変わる。
そんな和気あいあいとした雰囲気のときに彼らはやってきた。
それが今現在の状況へと繋がっている。


「だいたい君達はどこからこの情報を得たのさ?」

「フンッ。ヴァリアークオリティーだ」

「そーゆーのオレっち知ってるもんね!!ストーカーっていうんだじょおー」

「極限にストーカーだな!!!」

「なぬっ!!??それは違う!!愛故にだ!!」

「「「……………」」」


思わず引いてしまったのは不可抗力だろう。
ストーカーと称された彼らはヴァリアーだからで終わるが、レヴィが言うと何故か本物のストーカーに見えてしまう。
いや、たちの悪いストーカーに見えるのだ。
それこそ、蒼空が恐怖している姿を見てニタニタ笑っているようなストーカーに見える。
悲しいことにそれは蒼空以外の皆に伝わっていた。
何故か目を反らしてしまうのは、そんな可哀相な彼の宿命故にだろう。
しかし、誰も触れてはいないがランボが『ストーカー』という単語を知っているのには問題があるのではないかと一人思う蒼空である。


「はいはーい!!じゃあここで蒼空ちゃん争奪戦でも始めようかしら?」

「蒼空はモノじゃねーぞぉ!!」

−−ドカッ

「ししっ!!死ねよオカマ!!」

−−バコンッ

「消し飛べ」

−−ガツンッ

「ぐほぉ…!!!みんな、オイタが、過ぎるわぁ…」

「ル、ルッスーリアさん!!??」


蒼空をもの扱いすればこうなるのは誰しもがわかっていた。
それはもちろん蒼空を抜かしてだが。
しかしながら彼(彼女)は決して蒼空をもの扱いしたのではない。
ただ、いつまでたっても終わりを見せない言い合いに区切りをつけたかったのだ。
それゆえの行動が今の現状を作り出している。
なんともレヴィに続きそんな役回りである。
そんなことを思われつつも、蒼空はルッスーリアが殴られているのがショックで仕方がない。
知らないからこその行動であり、また彼女の優しさからの行動。
周りもそれに癒されながらも、ルッスーリアへの殺意を忘れない。
−−どのように転んでもルッスーリアにとって悪いようにしかならない。
今回、これを期によくわかってしまっただろう。


「ルッスーリアは丈夫だから気にしなくていいよ」

「え、そうなのマーモン?」

「そうだよ」

「ってか、なに当たり前に10代目の膝の上に乗ってんだよ!!」

「赤ん坊だからね」

「でしたら地獄を見るといいですよアルコバレーノ」


会話が繋がっていないとは正にこのことだろう。
蒼空もそれに気がついてるのか慌てふためいているが、ヴァリアー側はマーモンの行動が気に入らないのか睨んでいて、蒼空の守護者たちは既に牙を向けている。
しかし、当のマーモンは気にせず。
正にカオスと言わずなんというのかである。
ここにリボーンがいれば少しは変わっていただろう。
彼は確かに暴君で唯我独尊、俺様何様リボーン様を形にしたような人物だが、こんな状態を見れば彼はこう言うだろう。
「当の本人を困らせてんじゃねーぞ」と鶴の一声がでる。
暴君ではあるが、なんやかんやで彼は彼女が好きなのである。
しかし、今回は用事でリボーンは来ていない。
故に現状が混沌としてしまうのだ。


「ボス…私と骸様と一緒に、遊ぼう…?」

「え、」

「うぉおぉおぉっ!!!貴様抜け駆けだぞ!!」

「蒼空ーオレっちと遊んでー」

「なに言ってんだアホ牛!!」

「蒼空、ついて来い」

「ボスさんもどさくさに紛れんなぁ」

「蒼空は当然僕と一緒に居たいよね?」

「クフフ、相変わらずのアホさですね雲雀 恭弥」

「う、あ…」

「ししっ、早くいこーよ蒼空」

「君は蒼空を無理矢理引っ張りすぎだよ」

「ベル!貴様…!」

「顔が気持ち悪いわよレヴィ」

「ってか蒼空に手を出さないでほしいのなー」

「ーっ!!」

「10代目?どうかなさいましたか?」

「リボーン!!!助けてくださいーっ!!!!!!」

「「「!!!???」」」


思わぬ蒼空の助けに一同目を見開いた。
助けを呼んだ蒼空は涙目で、そしてこの混沌とした雰囲気の改善策が見つからず頭はパニック状態。
さすがにこんな風になるとは思っていなくて、皆が皆あわてふためく。
せめて落ち着いてもらおうと手を伸ばした獄寺。
−−刹那、それは光の早さで通り抜けた。
そう、銃弾が獄寺の手すれすれに打たれたのだ。
それを見た瞬間、その場に居た蒼空以外の者は嫌な汗が吹き出たのがわかった。


「おい、てめぇーら」


壊れたブリキのようにギギギッと音をさせて全員が後ろを振り向いた。
その声は地を這うように低く、殺気を隠さないで発せられる。
ボルサリーノで隠されたために表情は見えないが、鬼の様な顔をしているのは誰しもがわかった。
なぜこの場にいるのか、誰もが疑問に思ったが、言ってしまえば最後。
明日の朝日は拝めないだろう。


「死にたい奴から前に出ろ。順に殺してやるぞ」

「お、落ち着いてくださいリボーンさん」

「大丈夫だ。オレは落ち着いてるぞ」


うそだ!!!心の中でそう言ったのは間違いない。
第一、落ち着いているものがカチャカチャと何回も銃をいじるのだろうか。
ましてやこんなにも殺気をだすのだろうか。
そんな疑問もあるがまずはこの状態の脱出が重要だと心の中で思った。
−−しかし、無意味な思考なのだが。
蒼空に関することでキレたリボーンは誰も手に付けれない。
それは獄寺たちが知らない事実である。
故に…−−。


「明日の朝日は見れねーと思え」


こんなにもキレている理由がわからなかったのだ。
しかし、十秒後にはそれをよく理解したのだった。
−−辺りに叫び声を撒き散らして。



鬼の居ぬ間に
…なんて無理!!

(蒼空大丈夫か?)(リボーンごめんなさい!迷惑をかけてしまって…)(オレこそ悪かったな一人にして)(いえ…)(んじゃ遊び行くぞ)(え、あ…はいっ!)






感謝企画
澪様ありがとうございます!
20110827
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