「蒼空、これが君には似合うよ」

「ボンゴレ、これを身につけなさい」

「え、えっと…」


その言葉に蒼空は固まるしかなかった。
言った二人は同時にお互いを睨んで動かない。

ことの発端はたまたま蒼空がジュエリーショップに寄ったことから始まった。
蒼空も女の子ということだけあってジュエリーには興味があった。
親から貰っているお小遣のために買おうとは思わないが、見たいという気持ちはやはり強い。
いわゆる、ウィンドウショッピングである。
しかし、そんな蒼空の姿を見つけた陰が二つあった。
−−雲雀と骸だ。
フラフラと入っていった蒼空を見て雲雀と骸も着いていく。
そして、ばったりと出会ったのが始まりだった。


「だいたい、なんで君がいるんだい?まさかストーカーかい?」

「それは君ではないんですか?僕はクロームにプレゼントするものを買うために来ただけですよ」

「だったら君はあっちにいってよ。僕は蒼空と回るから」

「それは困ります。彼女にはクロームのものを見繕ってもらわなければなりませんからね」


バチバチと見えない火花が散る。
もとより馬が合わない彼らにとってこの場は苦痛であった。
しかし、蒼空がいるため我慢しているのだ。
本当なら、雲雀か骸のどちらかがどっかに行ってくれればいいのだが、何分負けず嫌いな彼らだ。自分がどこかに行くなんて考えたくもなかった。
ましてや、(口にはださないが)好きな女の子の前で尻尾を巻いて逃げるようなことは死んでもしたくないというのが彼らの本音である。
…その間、蒼空は雲雀と骸に勧められたジュエリーを真剣に見ているが。


「蒼空には華美じゃないシンプルなブレスレットだよ」

「いいえ、彼女の魅力を最大限に活かすあのイヤリングです」

「なにそれ。蒼空は風紀を守るいい子だからイヤリングはしないよ」

「だったらブレスレットも風紀違反ですよ。イヤリングが1番です」

「僕が許可するからいいんだよ。並盛の秩序は僕だからね」

「はっ。僕に負けたアヒルが何を言ってるんですかね」


どんどん空気が悪くなるのが目に見えてわかった。
その例に、皆がどんどんジュエリーショップから出ていく。
当の本人たちはまったくと言っていいほどに気がついていない。
そして、その原因の蒼空はと言えば…まだ悩んでいた。
そんな蒼空を外から見ていた客は「勇者だ!」「あの娘に手を出したら雲雀さんに殺される!」などと言っていた。
むしろ蒼空に手を挙げたならば雲雀や骸だけではなく、忠犬や野球馬鹿、芝生頭に暗殺部隊、某アサリファミリーや虹がついて来るだろう。
自殺行為のなにものでもない。


「蒼空はどっちがいいんだい?」

「そうですよボンゴレ。君はどっちなんですか?」

「えっと…」

「君が急かすから蒼空が決められないじゃない」

「それは君が急かしたからですよ」

「あ、あの!」

「どうしたの?」
「どうしました?」

「私、どっちも素敵なものだと思うんです!」

「「!!」」


手元にある彼らが選んだジュエリーを愛おしそうに見ている蒼空を見て、言い合っていた二人が止まる。


「ブレスレットは雲雀さんのように風紀を守るような統一されたシンプルなデザインです。
イヤリングはどこかミステリアスで、変わっていて、けどこの綺麗な水晶が骸さんを表してるみたいです。
だから私はどちらも好きなんです!お二人みたいですから」


自分を表しているようなアクセサリーが好きだと彼女は言い切った。
それが欲しかった言葉ではないのだが、それでも嬉しいと感じてしまうのはしかたがない。
なぜなら、あんなふうに愛しく見られたら、言えないのだ。
悪態をつくわけにも、怒るわけにもいかない。
ただ、嬉しいと素直に感じるしかない。


「やっぱり蒼空は蒼空だね」

「君らしくて逆にいいですよ蒼空」

「えへへ」


はにかむように笑った蒼空に雲雀と骸は負けを認めるしかなかった。
確かに、雲雀や骸にとっては嫌いな部類の人間に値するのが彼女かもしれない。
それでも彼女を好きになることができたのは…こんなにも平凡な少女であり、でも芯の強い彼女であったからだろうとわかる。
惚れた理由はあげればきりがない、だが…好きになるのに理由はいらないということだけは彼らには言えた。




(雲雀さん、骸さん。クレープ食べに行きませんか?)
(付き合ってあげるよ)
(しかたありませんね)
(ありがとうございます!)







澪様リクエストありがとうございます!

20110620
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -