雨がシトシトと降り注ぐ中、沢田家は一段と賑やかだった。
主な理由はリボーンと、そしてビアンキの『ドッキドキ!恋は台風の如し』という講座のせいであった。


「よく集まったな」

「小僧、今日はどうしたんだ?」

「なんかの講座ってのは聞いたんスけど…なぜへなちょこまでいるか不思議で…」

「いろいろと理由があるのよ。っと…最後の二人が来たわ」

「最後の二人?」


蒼空を抜いたいつものメンバーにプラスしてディーノとビアンキがいる。(むろん獄寺が倒れないようビアンキはゴーグルをかけている)
勿論それは蒼空の部屋であり、当然蒼空の許可など得てない。
しかし、蒼空は下でお菓子を作っているために言わずとも許されている。
いつもの思いつきが故にすべてが許されているということだ。
そんな前提がありつつ今があった。
話を戻すが、ビアンキの言葉に皆が首を傾げているのは仕方がない。
なぜなら普段のメンバーならばとうに揃っていて、増えるも減るもないからである。


−−ガラッ

「ちょっと、その髪邪魔なんだけど」

「クフフ、君こそ僕と同じ所から入ろうなんて考えないでください」

「愚問だよ。僕は常に窓から入ってるんだ。君が変えなよ」

「ストーカーですか?雲雀 恭弥、君気持ち悪いですよ」

「ワォ!それは君でしょ?毎回毎回、蒼空に冷たい態度をとりながらも影から見てるんだから」

「僕は僕のしたいようにしているだけですよ」

「だったら蒼空に近づかないでくれる?」

「それはできない相談ですね」

「んな喧嘩しながら10代目の神聖なお部屋に窓から入んじゃねーーっ!!」

「「黙れ忠犬」」

「っの、やろーっ!!」


なぜだろうか、そんな疑問が湧くくらいに彼らは口を合わせて獄寺に暴言を吐き出す。
普段ならばさっきのように喧嘩をしているのに、こんなタイミングだけ彼らの口は揃う。
当然言われた獄寺からすれば苛立つものがあり、殴りたくなるのも事実。現に後ろに回した手が握り拳を作っている。
本当に苛立つやろーだ!!なんて声が聞こえそうだ。


「まぁまぁ!」

「そうだぜスモーキング落ち着けって!」

「黙れ野球馬鹿に跳ね馬!!」

「ふん。それより今日は何のようだい赤ん坊?」

「…彼女もいませんし」

「蒼空は下でお菓子を作ってるぞ。まあ今から説明するから座れ」


骸は嫌々窓に寄り掛かり、雲雀は我が物顔で蒼空のベッドへと座る。(無論、靴は脱いで窓も閉めている)
だが、やはりというか、当然というか蒼空のベッドへ座る雲雀に納得してない顔触れがしかめっつらになる。
言わずもがな、獄寺と骸だ。
そんな二人に気がついたリボーンは溜め息をつくと同時に睨みつける。
渋々とだが、本当に嫌々だがなんとか二人とも納得したようだった。


「で、結局今日はなんのようだ?」

「今日集まってもらったのは他でもないわ。蒼空がやっと恋をしたのよ」

「「「……………」」」

「おい、てめぇら反応しろ」


そんなリボーンの声が耳にも入っていないのか、一同固まったきりである。
彼らの頭の中では、コイ、こい、鯉?なんて言葉が延々と巡っている。
それに気がついたリボーンはニヤリと、ビアンキは嬉しそうに笑った。
そして、そんな中やっと獄寺が元に戻り…−−。


「リボーンさん」

「なんだ獄寺」

「どこのどいつですか、その野郎。10代目をたぶらかす野郎なんてオレが果てさせます…!」


−−高らかに物騒なことを言った。
勿論、それは獄寺だけではない。


「並中の生徒をたぶらかすなんて、そいつどうしようね」

「クフフ、全くボンゴレは僕が狙っているというのに」

「ははっ!んじゃ骸は蒼空が好きなのか?」

「別にそういうわけではありませんよ。ただ目的のためです」

「へぇー、まあ大事な妹分をたぶらかすなんてそいつは許せねーな」

「因みに蒼空の恋の相手はこのなかにいるぞ」


またもやピシリと石化してしまった一同。
もしも他の奴、自分と関わりがない者ならばボコボコにできるのだが−−この中と言われると自分も含まれる。
そう考える、もしも自分だったら…そんな淡い思いが生まれてしまう。
さっきの時点で自分ではないのか!と思う人がいないのが奇跡だったのではないだろうか。


「とりあえずパイナップルから咬み殺すことにしようか」

「クフフ。君ごときでは無理ですよ」

「ま、獄寺じゃないよな」

「んだと野球馬鹿!!」

「本当だろ?」

「果てろ!!!」

「おい、おまえら!!」

「「「邪魔!!!」」」

「うぎゃっ!!」


雲雀は骸。
獄寺は山本と、そんなふうに武器を取り出して戦おうとする。
流石にその光景にディーノはギョッと目を見開いた。
ここが外ならば問題ないのだが、ここは蒼空の部屋だ。
最年長の自分が蒼空の部屋を守らなければと思い、前に出れば思いっ切り皆から総攻撃を受けた。
むろん、ロマーリオがいないディーノはへなちょこなために避けれるはずもない。
ドアの外へと追い出されたのは言うまでもない。
−−それだけならばよかった。
持ち前のドジから彼は自分の足を片方の足に絡ませ、ゴロゴロと丸くなって階段から落ちてしまったのだ。
…イケメンも怪我だらけでは酷いものだ。


「いてて…!またすっぽ抜けちまったぜ」

「ど、どうしたんですかディーノさん!?」

「へ?どうしたんだ蒼空?」

「すっごい音が響いたので見に来たんですが…すごい怪我じゃないですか!」

「ははっ…ちょっとあって、な…」


慌ててダイニングから出てきた蒼空を見てディーノは苦笑するしかなかった。
自分の失態を素直に言えないのは、彼女が一人の女の子として好きだからだ。
いつだって好きな彼女の前ではカッコイイ男でありたい、それが男の心理である。
今だに心配そうに見る蒼空を見るとこっちが気が気じゃなくなってしまう。


「手当てしなくちゃダメですよディーノさん!」

「いいって!このくらい平気だぜ?」

「そ、それでも…!」


尚も心配してくれる蒼空を見てディーノの気持ちは舞い上がる。
胸からどんどん溢れる愛しさに歯止めが利きそうになくなる。
先程、蒼空に好きな人がいると知ってしまったからだろうかと思った。


「なぁ、蒼空…」

「ディーノさん?」


ギュッとその手を握れば、小さくて護りたいと思うものだった。


「蒼空に好きな奴がいるって知ってる」

「え、」

「それでも、好きなんだ…」

「っ!」

「好きだ蒼空」


目を見て真剣に話せば、ほんのりと蒼空の頬が桜色に変わる。
不覚にもかわいいと思ってしまった。

きっと蒼空が好きなのは歳の近い獄寺たちの誰かだろうとディーノは推測していた。
こんな歳の離れた恋人など蒼空はいやだろう。
ましてや、彼女と毎日のように会えない恋人など寂しい思いをさせるのは目に見えていた。
だから報われない恋だろうとも思った。
だから、想いだけは伝えたい。
それがディーノの正直な気持ちだった。


「あのディーノさん」

「どうした?」

「私、綺麗じゃないです。ディーノさんの周りにいる女性には絶対に勝てないような子供です」

「そんなことねーって!蒼空はすっごいかわいいぜ」

「では、そんな私がディーノさんを好きでもいいですか?」

「−−え」

「私もディーノさんが好きなんです」


好き…?−−その言葉がぐるぐるとディーノの脳内を回る。
ようやくその意味を理解したときには、顔が真っ赤になった。
同時に、顔の筋が緩んだ。
…まあ、彼も男子であるということだ。


「嘘じゃ、ねーよな?」

「はい」

「はは…すっげー嬉しい」

「私も、ですよディーノさん」

「っ、蒼空!」

「うっ!」


あまりの嬉しさに子供のようにして蒼空に抱き着いてしまった。
驚きつつもディーノを受け止める蒼空もまた、嬉しそうだ。
仄かに香るお菓子の香りは−−彼らの幸福のあらわれようみたいである。

…抱擁しているのがばれてディーノがボコボコにされるまであと3分。




(もちろん宝は蒼空だぜ!)






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20110214
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