「なにをしてるんですか沢田 蒼空」

「あ、骸さん!」


花が見えるほどに喜んだ顔でコチラを見る沢田 蒼空。
彼女はわかっているんですか。
ここは黒曜中の校門の前であって、並盛中学の服を着ている彼女は凄く目立っているということに彼女は本当に気がついているんですか。
自分でいうのもなんですが僕はこれでもモテているんです。
先程から彼女にあまりいい視線を送ってない人だって多いんですよ。
そんな視線に気がつかないなんて本当に彼女は色んな意味で大丈夫ですか、ってそんなこと僕が気にすることでもないじゃないですか。
全く、君と居ると本当にペースが見出されます、なんて走り寄って来る彼女にいいたいですね。


「骸さん聞いてください!なんとこの前お話していたパン屋さんがオープンしたんです!!」

「ああ、君が一方的に話していたパン屋ですか」

「そこのチョココロネがスッゴく美味しいんです!」

「僕の話しは無視ですか…?、チョココロネ?」

「はい!」


疑問には答えてくれるんですね、なんて思いつつもチョココロネですか。
長い間食べていなかったものですから食べたいですね。
そんな僕の気持ちが彼女にも伝わったのかキラキラした瞳でずっと僕を見ているんです。
ああ、大方このあとに続く言葉がわかってきました。


「一緒に行きましょう骸さん!」


−−やはりそうでしたか。
毎回毎回なにかと僕にそう言ってくる彼女。
以前はケーキ屋、その前はコーヒーショップ、ああクレープもありましたね。
そこに行ったら行ったで彼女が何かを買って僕にプレゼントするのが当たり前になっているんですが、おや?これでは僕が貢がせているみたいじゃないですか。
はぁ、どうせ仲良くなりたいという気持ちがあるのに、素直にそう言えば僕だって少しは考えると思うんですが……多分そうだと思います。
馬鹿みたいに優しい彼女にはなかなか分かってもらえないみたいですが。
しかし、不安そうにコチラを見てくる沢田 蒼空を見ていると少しいたずらしたくなりますね。


「そうですね…あまり今日は気分が優れないので…」

「あ、そうなんですか…」


ああ本当に彼女は面白いです。
うさぎの耳が垂れているのがなぜか見えてしまうなんて一体僕はなにを考えているんですか。


「ん、?」


「あの子六道先輩にフラれてるー」

「当たり前でしょ。六道先輩があんなちんちくりん相手にしないわよ」

「言えてるねー!」


「……」

「骸さん?」


沢田 蒼空と僕に聞こえないように話しているつもりでしょうが僕には丸聞こえなんですよ。
ですがあの雌猫たちの話しを聞いていると面白くありませんね。
ちんちくりんなんて言ってますが、これでも意外に胸は普通くらいにあるんですよ彼女だって。
別に変な意味で言ってる訳ではないですよ。
ただ細いっていうのであって、ちんちくりんじゃないって言いたいだけです。
本当に僕らしくない。
こんなふうに考えてしまうなんて。
前までの僕ならそんなことさえ思うこともなく切り捨てていたのに。
はぁ、全くいつから僕は変わってしまったんですか。


「行きますよ」

「え、あの骸さん?」

「何をしてるんですか、パン屋に行きますよ」

「でも体調が…」

「僕が行きたいんです。全く世話がかかりますね」


早く行きたいのもあって彼女の手を掴めばワタワタと慌てだす始末。
そんな姿に思わず頬が緩んでしまう。
そして、さっきの雌猫に見せ付けるようその手を強く握る。
その雌猫たちを見れば驚いたように目を見開いて、真っ赤な顔で沢田 蒼空を睨んでいる。
何と言うか…−−。


「醜いですね…」

「へ?なにか言いました骸さん?」

「いえ、なんでもありませんよ」


もう一度そう言って彼女に微笑めば、彼女は嬉しそうに、そして綺麗に笑う。
…マフィアの次期候補に僕はなんてことを思ってるんですか。
それでもやはり綺麗に彼女は笑うんです。
なんだか馬鹿にする気もおきなくてまた強く彼女の手を握る。
僕の胸一杯に広がるこの気持ち。
あまりにも暖かすぎて僕を溶かしてしまいそうですよ。


「蒼空、君はなにを買うんですか?」

「あ、」

「蒼空?」

「初めて、初めて名前だけで呼んでもらいました…!」

「そう、でしたか?」

「はい!」


「スッゴく嬉しいです!」なんて子供みたいに笑う蒼空に僕はどこか変な気持ちが芽生えたのがわかる。
それは僕のような人には似合わない感情。
ですが君なら「骸さんは凄く優しい人ですよ」なんて笑って言うんでしょう。
少なからず君という存在が僕には大きすぎる。普段なら決して思わないんですが…−−今だけは蒼空の手を誰にも譲りたくないんです。




(今日は僕がプレゼントしますよ)
(え…)
(僕も君と仲良くなりたいですよ)
(ーっ!)







2周年フリリク
雪兎様のみお持ち帰り可

20101108
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