秋空の綺麗な今日、ここ並盛ではある行事が行われていた。
その名も−−ボンゴレ式ハロウィンだ。
みての通りリボーンの楽しみという名の遊びだ。
「起きろ蒼空」
「う、ん…?、り…ぼーん…?」
「今からボンゴレ式ハロウィンを始めるぞ」
「−−え」
さっきまで舌っ足らずな言葉を発していた蒼空も『ボンゴレ式』と言われた瞬間、跳び起き、顔を引き攣らせた。
『ボンゴレ式』と付いた行事にいいものなんてなかったと経験上よくわかっている。
ましてや、リボーンの生き生きした顔を見るととてつもなーーっくいいことではないとわかってしまう。
ああ、と蒼空は嘆くしかなかった。
それは自分では止めれないと、悲しいことに今までの経験からわかっていたからである。
「コレに着替えろ」
「え、あの…」
「そうしたら紙に書いてあることをしてこい。しなかったら−−わかるな?」
「ひぃいぃ!」
「じゃあ…−−レッツ!ボンゴレ式ハロウィンだぞ☆」
可愛らしくウインクをしながらも手には脅しに使われてきた黒く光ものがある。
蒼空も今日1番の最悪な出来事に泣くしかなかったのであった。
Target1 獄寺 隼人
「ご、獄寺君!!」
「へ、」
「と、Trick or Treat!!お菓子くれなきゃイタズラしちゃいます!!」
「んなーーっ!!??」
大好きで大切な彼女の声が聞こえた瞬間、獄寺は光の速さで振り返った。
そして、思いっきり固まった。
見えたのは確かに敬愛して止まない次期ボンゴレボス。
しかし、いつもと違っていたのだ。
そう、彼女の格好は魔女だ。
それも可愛い系のだ。
大きな魔女帽子を被り髪は二つ縛り。
ワイシャツにリボン、ベストを着て、下にはカボチャスカート。
ボーダーのニーハイとロングの手袋、リボンの付いたショートブーツ。
極めつけは星のスティックにリボン付きのほうき。
獄寺が見とれてしまったのはやはり愛しい彼女だからである。
−−す、すげぇ可愛い…!なんて思ってしまうあたりぞっこんであった。
「10代目…!?」
「うぅ、あのこれはハロウィンであるからで…!」
「ハロウィンっすか?あーえっと…」
真っ赤になりながら口ごもる蒼空を見てようやく話の流れを掴んだ獄寺。
そして今日がようやくハロウィンであることを思い出したのだ。
Trick or Treatとはお菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ、だ。
獄寺としてはイタズラも嬉しいが(もちろん蒼空がするからだ)お菓子と言われたからにはお菓子を彼女にあげたい。
それは、彼女の笑顔があるからあげたいという言葉がセットするのも当たり前だ。
ポケットの中を詮索すればカサリとなにかが獄寺の手を掠めた。
それを引っ張りだせば出てきたものは可愛らしいうさぎ型のチョコである。
なぜあるかと聞かれたらたまたま買ってしまったというのが理由だ。
−−獄寺が持つとあまりに可愛すぎるのは口が裂けても言えないだろう。
「10代目、こんなんでも大丈夫ですか?」
「うわぁーっ!!ありがとうございます!」
「い、いえっ!!」
獄寺から貰ったチョコを嬉しそうに眺める蒼空に、そんな蒼空を見て頬を紅くする獄寺。
蒼空は蒼空でリボーンにこれで怒られない!と思っているが、獄寺は違う。
蒼空がこんなにも喜んでくれたのだ、嬉しさに身が痺れていた。
いや、バクンバクンと心臓が煩くてしかたがない。
−−10代目はなんて可愛らしい方なんだ…!
真実を知らないのもまた獄寺の運のよさだとしよう。
「獄寺君ありがとうございます!」
「10代目のお役に立てたならなによりです!」
「あ、後で私のお家に来てもらえますか?渡したいものがあるの」
「はははっはいっ!喜んで伺わせていただきます!!」
「ありがとう!じゃあまた後でね!ハッピーハロウィンです!!」
手を振りながら去る蒼空を見て自然と頬が緩んでいた。
キラキラと光笑顔がとても眩しくて、さっき取り付けた約束もあまりに幸せすぎて…−−。
なんだか一生分の幸せを使ったような感覚に陥る。
恐るべきは恋のマジックであった。
とりあえずTarget1 獄寺 隼人は終了である。