星彩 「淵師は私が護る」 そうして彼女の前へと立ち、彼女を狙う敵をすべて斬り払うことこそ私の誇りであった。淵師は私がいないと死んでしまうような子だ。私がいないと粗相をしてどこかで野たれ死にをしてそうな子。とても小さくて、可愛くて、私の大事な仲間だ。 「星彩は強いね、本当に強いね。わたし、なんだか姫にでもなったみたい」 「……」 私は淵師の言うとおり、淵師が姫だとしたら私という女は王子になるのだろう。私という女。それはなんて愚かな響きなのだろう。不意に私を現実へと引き戻す正論。正しいからこそ憎い。私はただの矛だ。盾がないと、あまりにも脆い。だから強くならならければならない。ただ、どうしてこんなに虚しいのか。私は悔しさに唇を噛み締め、とても愛らしい淵師を見た。ちょうど目が合ってしまった。 「でも、」 そのとき、淵師が相変わらずふにゃりとした笑みを浮かべ、言った。 「私、強くなるわ。星彩を守れるように」 「淵師……」 「星彩は誰の姫になるんだろうねえ。関平殿かな? 私がいいなあ、なんて」 「私は姫になんてならないわ」 「なるよ」 はっきりとした声に、驚いた。 「そうね。……淵師が言うなら、なれる気がする」 冗談を含めて言うと、淵師は大げさなほどに頷いた。 「なるときは、一番最初に言ってね」 将来のことを想像しているのか、楽しそうに、彼女もまた冗談を言うようだった。私は頷いた。どこか晴れ晴れとした気分だった。 淵師がもし姫になるときは、私は同じ姫としてあなたを見届ける。どうか、笑っていてね。そう考えたけれど、淵師は今も理想通りの笑みを浮かべていた。 |