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陸遜

あなたと私は出会うには早すぎた、ので、しばらくの間は距離を置きましょう。はてさて、この言葉はどちらから出たものか。眼前で泣き出す淵師殿の涙を人差し指ですくい、微笑む。
泣きじゃくる淵師殿のそのような姿がやはり幼い。涙をすくったまま何もできない私も幼い。愛嬌もない歳だけれど大人とも言えない。永遠とは何かについて考え出す年頃。



「まぁ、そんな年頃も過ぎて今となっては陸遜殿ってちっとも可愛くありませんけど」
「あのときの言葉、淵師殿が言ったのでしたね。口調がややこしいので分かりませんでした。混ざるんですよね」
「敬語と言ってください」
「敬意を微塵も感じませんが」
「陸遜殿こそ」

そう言って、互いに笑う関係。
大人になって変わったのは心も視界も世界も広くなったこと。それと、余裕。淵師殿をからかうなど、過去の私にできただろうか。できるわけがない。あの頃は嫌われたらどうしようかなどと、常に悩んでいた。

今の私たちはむしろ謙遜や遠慮、愛嬌が足りない。それなのに好きで仕方がない。

「淵師殿」
「はい」
「先ほど、私にはあなたに対して敬意がないなどと言われましたが、もちろん尊敬してますよ。……ただ、恋情の方が強いのです」
「なっ、何を!」
「すみません、言わないとあなたは理解しないでしょう」
「はー、そうですか、そうですか」

だから、たまにはあなたも本心を見せたらどうです。



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