陸遜は不思議だ。私の部屋にいきなり現れて、何をするかと思えば日本語の本を勝手に漁って、気付けば日本語を読めるようになってるし。
あと、火が好きらしくてコンロをつけては消してを繰り返してる。まったく、危ない奴め。
「なまえ殿、日本は凄いですね!」
「うーん、日本というより世界中であるし、そもそも最近は火がでないから」
「えっ、どうしてです?」
「まあ危ないからね」
うん、陸遜ってば今凄い嫌な顔した。
気を取り直して、話題を変えようと彼に一冊の本を渡す。彼が興味を持っていたアトラクションというものの冊子だ。
遊園地という所に行きたいらしい。近所に住む友達の家にも勝手に現れた呂蒙さんと甘寧さんや凌統さんも誘ったようだ。お金は私の懐からである。
「寛大な私を見習ってよね」
「もちろんですよ、なまえ殿!」
と言う視線は遊園地の観光雑誌。
常備してるペンで行きたいところにチェックしている。まして空いたスペースには予定も書き込んでいた。待ち時間1時間以上の場合、乗れるものをとにかく乗るようだ。なんだかおかしい。
私が笑ったことに気付いた陸遜は、横に座りませんかと聞いてきた。もちろんと答え、すっぽりと彼の横におさまる。前は机、後ろにはソファー。この狭さが心地よいのだ。
「陸遜は何に乗りたいの?」
「全部です! って、言いたいですが……。少々時間が足りませんので、とりあえずジェットコースターには」
「結構派手なものを選ぶねー」
「そうでしょうか?」
そういえば呂蒙さんが言っていた気がする。陸遜は派手な着火法が好きだと。火矢を放ち、紅蓮の炎に包まれる彼はまさしく幸せそうだと。多分過度に言っているだけで、そこまで激しい人だとは思わないけれども……。
「陸遜が料理してみる?」
「よ、よろしいのですか!?」
「まず何作るかを言ってね」
「炒飯やフライパンで焼く肉料理とかどうです?」
「それ全部、油使って火が燃え上がる料理だわ」
過度に言っている気がしなくなってきた。はぁ、とため息を落とすと陸遜は寂しそうな表情を浮かべる。
「また今度、まずは簡単な料理を二人で作ろう?」
「……はい! なんだか、そちらの方が楽しみです」
「良いこと言うねー」
「本当のことですよ、なまえ殿。そうだ、ジェットコースターは貴女の手を握って乗りたいです」
「それは駄目」
ああもう、そんな悲しそうな顔しないでって。
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