遭難 | ナノ


*いろいろと下な会話多い





郭嘉さんはこの日本によく親しんでいる。漢字にも触れ、言葉も読み書きできるようになり、あとは日本人離れしすぎた美しい容貌さえ隠せば問題ない。
彼が来てからは、私が逆にここに居づらくて仕方ないのだ。おかしい。日本は私に親しみのある国なのに。

今日は郭嘉さんが来たがっていたコンビニへとやってきた。深夜を回っていて、買うものはアイスとジュース、あと安物の葡萄酒。

「私が持とう」
「あっ、ありがとう」

こういう気遣いをする辺り、確かに女性が意表を突かれて惚れるのも仕方ないだろう。私自身、彼が自分の部屋にいたときは心臓が跳ね上がった。金髪のイケメンがいるのだもの。すぐ、そこに。

「こら、成人向け雑誌を見ないの」
「おや、嫉妬かな。でも安心してほしい。私はあなたがいる限りこれに手を出さないよ」
「はぁ、そうですか」
「うーん、つれないね」

だって、郭嘉さんは雑誌を見なくても今まで、とそこまで考えて、新発売のプリンを見つけたため思考を張り巡らすのをやめた。
ここはミルクプリンを買いたいけれども、まずはプリンなのだからプレーンを……。あぁ、どうしよう。
悩みに悩んだ末、買うことをやめようかと思ったが、後ろからにゅっと伸ばされた腕に、肩を跳ね上がらせてしまった。

「私はミルクプリンを頂くよ。なまえはプレーンでよろしいかな。そうだ、二人で一口ずつ交換し合おう。テレビで見たとき、興味があったものでね」

なんだか長く喋られた、気が。
とりあえず分かったのは、郭嘉さんと一口ずつプリンを交換し合うこと。まったく、お金が減るのは私だというのに。そう思いながらも、頬が緩むのを隠しきれなかった。

郭嘉さんはそれに気付いたためか、くすりと笑うと私の頭を撫でてくれる。待って、ここ店内だって。

「なまえは楽しいね。うん、それに愛らしい」
「……ありがとう、ございます」

いざ改めて言われると恥ずかしい。ぼんやりと郭嘉さんを見つめてしまった。そのとき、郭嘉さんは私の後ろにある何かを見つけると、横を素通り、その何かを手にとった。

「洒落た箱だねこれは?」
「あ、ああ、え? えーと、何でしょうね」

それって、その、つけるやつじゃないでしょうか。見たこともないから分からないけれども、保健体育で習ったことがある。

「貼り薬なのに薄いって、日本は凄い医療技術のようだ」
「ちちち違います、けど、……あの、裏読んでください」
「はは、確かにそうだね」

ぺらりと裏をめくる。そんなまじまじと見ないでください。なんて、私が思ったけど、箱からしてみたらもっと見てほしいと思うかも。彼の瞳が動くのを見て、あぁ、読んでるんだなあと感じる。

「なるほど、これは失礼」
「はい」
「でもこれがあったら安心だね」
「買おうとしないでください! それに、買っても誰に使うんですか!」
「おや、言わなくとも分かるだろう?」
「やめてください、こちらを見ないでください」

さっきから調子がおかしい。まさか、コンビニにこんなものが売ってるなんて思ってもいなかったのだ。とりあえず、好きだとか想いも伝えてない人に抱かれる趣味はないから、郭嘉さんは一蹴。

「はは、手厳しい」
「こっち、見ないでください」

だからその箱をカゴに放り込まないでって。しかも二つも。何回やる気だ、誰と、どこで、金もどうするのやら。高いんだから、これ。

「郭嘉さんが店員にスマイルふっかけたら値引きしてくれるかな」
「あなたの役に立つなら何でもするよ」
「じゃあ、とりあえずそれは戻してください」
「……なまえは子供できてもいいの?」
「しませんから! しませんから!」

結局、から揚げ棒を買ってあげたら喜んでくれたため、まぁ、もうどうでもいい。




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