短編 | ナノ

 01

「関興、何してるの?」

ひょい、と後ろから覗いてみれば関興は「あ……」と頼りなく声を漏らした。
手にはカメラが一つ。どうやら何かを撮っていたようだ。
穏やかに彼は笑みを浮かべると、今まで撮っていた写真を見せようとしてくれた。

「うわあ、すごい。アングルとか見てて引き込まれるねえ」
「ありがとう。……それにしても、写真を撮るのは楽しいな」

今は秋に入ったが、夏の向日葵や海の風景、時々彼の家族写真が出てくる。
なんだか今までの思い出が蘇るよう。自然と、二人で笑顔を作ってしまった。
関興は最後の一枚を見せようとボタンを押す、そこには、私の寝顔が。

「あっ……」
「ちょ、ちょっと、何撮ってるの!」

急いで取り上げようとしたが、彼はひょいとかわし、私に警戒態勢をとる。
ふー、と毛が逆立たせる猫みたい。む、としていて可愛いと思ってしまった。

「もう、撮るときはちゃんと言ってよ」
「すまない。ただ、可愛いと思ったから」
「……罰として、私も写真撮らせて」

ポケットから携帯を出し、カメラ機能を開く。
関興は未だ何のことか理解をしていない。二人並び、肩も顔も密着するよう指示をした。戸惑う関興の肩を強引に引っ張ると、無言で顔をずいと近づけてくれる。
カメラを空にかざし、私はシャッターを押した。ひゅう、と冷たい秋風が吹く。

「うん、いい感じに写ってるよ」
「髪の毛で顔が……」

関興の顔の半分が髪の毛で隠れていた。つい笑ってしまうと、彼は頬を赤く染めて怒ってしまう。そうは見えないのだけれど。

「でも、二人だけの思い出だね」
「そうだな。すごく、嬉しい」

「だから後で私の携帯にも送ってくれ」とちゃっかり関興は頼む。
さっきまでは怒っていたのに、今は写真にわくわくしているようだ。
もう一度保存された写真を見る。少し写りが悪いのに、だからこそ良いものに思えた。へへ、と頬を緩ませ笑うと、横からぱしゃりとシャッターを切る音が。

「と、盗撮は駄目!」
「駄目?」
「……いいよ、」

そう首を傾げられるとたまらない。
関興の横へ向かい、私は並んだ。家に帰ろうって話になって、その最中もカメラで写真ばかり撮った。道に咲く花とか、今まで目に留めたことがないけど、彼がみるなら私も見たいと思う。なんて。
「手、繋ごう」
「ん、関興ってば甘えん坊だね」
「やっぱり……いい」
「あ、待って! 繋がせて!」

そうして繋いだ手は思った以上に暖かかったり。



(繋いだ手から愛情)




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