短編 | ナノ

 01


星を見に来た。緑の彼を見つけた。彼は笑っていた。鼻歌交じりに、絵を描いていた。欝蒼と茂る草を踏みしめ、楽しそうだった。

何を描いているの?

そう私は聞いた。彼は綺麗な髪を夜風になびかせ、私のほうを見上げた。とても澄んだ目だった。煌びやかな衣服よりも、磨き上げられた石ころより、とても輝かしい。

これはねぇ、若だよ!

踊るように放たれた言葉は、星よりも明るかった。
この貴重な紙に描かれているものは、彼の大好きな若さんだった。やっぱり、と納得しながら私は笑った。彼も笑った。

馬岱さんはまた鼻歌を歌う。私も常に持つ笛で奏でる。
旋律は二人と、爛々とした夜空、茂る草と野生の動物しか聴いていない。自然に包まれる感覚を感じた。胸が踊ってしまった。

馬岱さんの絵は、三国一素敵です。

そう言ったら、そうかなあと笑って彼は白い歯を覗かせる。暗闇に包まれるのに、彼は若さんを当たり前のように描いて行く。なぞるように、筆を滑らせる。目を奪われた。また別に、胸が踊った。

若、最近体調が悪いんだよねぇ。

ふと言った言葉は、馬岱さんらしくない淋しい言葉だった。睫毛で陰る瞳の奥は綺麗な緑。口付けをしたくなるぐらいだった。

きっと、これからのために休んでるんです。ほら、馬岱さんと遠くまで駆ける約束、してたじゃないですか。

また、馬岱さんはそうかなあ、と笑った。その瞼からは橙の色彩を感じる。淡く、もろく、強くいようとする橙。
橙は黒に包まれ、それでも黄色い点々として空で美しい色を放っている。

彼も、橙色だと思った。




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