短編 | ナノ

 01

今日の郭嘉殿はどうもおかしい。
寝台に私を押し倒すと、ただひたすら口付けを繰り返した。角度を変え、押し付け合う。うっすらと唇を開くと、郭嘉殿の舌が私の口内を犯した。
目尻に涙がじんわりと滲んだ。酸素が足りずに意識を手放しそうになる。

しかし、その瞬間を彼は知っていたかのように、微笑を浮かべ、口付けをやめる。
目尻にたまる涙を親指でぬぐうと、慈しむような瞳で見つめられた。名残惜しいとは言えない。言わなくても分かってくれるのが郭嘉殿だ。
また目尻から鼻頭、首筋と撫でるように口付けを落としていく。そしてご褒美と言わんばかり郭嘉殿は唇へ辿った。

「んっ……かく、か殿……っ」
「……ん、淵師……?」

一旦やめて、私を艶っぽく見つめる。それだけで落ちそうになる。とくん、と胸が高鳴った。

「今日の郭嘉殿、おかしいです、んっ」
「はは、どうしてだろう……ね?」

言葉の合間にも彼は口付けをやめない。
だんだん麻酔がかかってきたかのように、体は動かなくなってくる。私が郭嘉殿の胸に抑えていた手も、寝台にゆっくりおりていった。
もしかして朝までするのだろうか。これ以上進まないのだろうか。そんな疑問が頭に浮かぶが、ふと、郭嘉殿が止まり、その瞳を覗き込んだ。

「あなたとずっとこうしていたい……。ああ、こんなことを私に思わせるなんて、本当にあなたは魅力的な人だ」

そう言って、触れるだけの口付けをする。

「……淵師が、今日賈クと仲睦まじく談義を交わすのを見たものでね。私には見せてくれないほど笑顔だから、なんだか……」

片腕で体を支え、彼はもう片方の手で自分の胸をとんと叩いた。その表情は物憂いを帯び、消えてしまいそう。見ていられず、私は郭嘉殿の首に腕を回し、そっと引き寄せた。

「郭嘉殿が嫉妬だなんて、不思議です」
「私にもやきもちぐらいあるよ」
「……私は、そばにいますから」

髪に唇を当てる。小さく音をたて、郭嘉殿の首から手を離した。体がゆっくり離れると、彼の顔は先ほどとは打って変わって自信満々の笑みに変わっていた。

「あなたは私の薬だね。淵師がいないと、私は渇望して自我を失くすかもしれない。ね、淵師。その笑顔は、私だけに見せてくれる?」
「……きゃ、郭嘉殿」

そう言った郭嘉殿は、首筋に顔を埋める。あまりにもくすぐったくて、それでいて甘くて、優しくて、頬が緩んでしまった。

「そう、その顔」
「……この顔は、郭嘉殿にしか、見せないです」
「……はは、嬉しいよ」

困ったように笑うと、郭嘉殿は何よりも熱のある口付けをした。強引でもないそれは、あっさりと引き離れ、名残惜しいと心の底から思ってしまう。

「もっと、淵師の可愛らしい顔を見せてほしいな」
「恥ずかしくて顔を隠したら……許してくださいね」
「さぁ? でも、そそられる」

そして、振り出しに戻る。
しかし今回は、郭嘉殿は私の衣服に手をかけている。覚悟をして受け止めると、そっと暗闇に溶け込むように、時間が流れていった。



(融解しましょっか)






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