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今日は8月31日、夏休み最終日だ。
昨日まで公園で遊んでいた子供たちはほとんどおらず、必死の思いで宿題と格闘中なんだなと思った。
俺だって小学校の頃はそうだった。
遊んでばかりで、夏休み終盤になってから宿題に手をつけて、凄く大変だったな。
だけど、中学生になった俺は違う。
それなりに計画をたてて、毎日ちまちまと進めていた。
そのせいもあってか、夏休み課題自体は夏休み半ばには全て片付いていた。
しかし受験生だから、出された課題以上に勉強しないとまずい。
受験生ってのは大変だな、と改めて実感した。
でも最終日ぐらいのんびりしたって誰も文句なんて言わないだろ。

ベッドに寝転がり、ぼーっと天井を眺めていると、ピンポーンと家のチャイムが聞こえた。
宅配便かなと思いドアを開けると、そこには見慣れた後輩の顔が。

「バネさん、宿題手伝って」

片手には課題がたくさん入った紙袋。
こんなに残して、こいつは夏休みの間何をしていたんだ。

「…とりあえず、上がれよ」

ダビデを部屋に通して、俺は飲み物とお菓子を持ちにキッチンに向かった。
部屋に戻れば、ダビデは俺のベッドに寝転がっていた。
もう呆れてため息しか出ない。
本当に宿題を終わらせる気があるのか、こいつは。

「おい、宿題やるんだろ」

「ちょっと休憩してから」

これはまずいパターンだ。
恐らく、このままにしておいたら、宿題なんて絶対にやらない。
どうにかしてダビデのやる気をおこさないと…

「ダビデ、今日中に宿題全部終わったら、いいモンやるぞ」

そう言うとダビデは飛び起きて、テーブルの前に座った。
相変わらず分かりやすい奴だ。

「いいモンって何?」

「そんなん全部終わるまで秘密に決まってんだろ。さ、やるぞ」

質問を軽くスルーして宿題のテキストを開かせる。
自由研究や作文といった面倒な課題は終わっているのが不幸中の幸い。
それに残ってるテキストもたいした量ではなさそうだ。
これなら今日中に終わらせれる。



「…やっと終わった!」

そう言ったころには日は沈みかけていた。
まぁ、何とか終わってよかった。
すると、ダビデに肩を叩かれる。

「バネさんバネさん、ご褒美ちょうだい」

もう忘れてるかと思ってたのに…
でも、頑張ってたしな。何かあげたいが何をあげようか…

「…じゃあ、今度ダビデの食べたいモン奢ってやるよ」

それを聞いたダビデの顔は珍しく笑顔で。
普段俺と二人きりの時でもなかなか見れないほどの満面の笑み。
そんな喜んでもらえるなんて思わなかっただけに、俺も凄く嬉しい。

「ね、明日学校帰りでいい?」

「別に構わねぇよ」

玄関までダビデを送っていく。

「じゃ、また明日な」

「うん。あ、ちょっと待って…」

そう言ったすぐに唇に柔らかい感触。
触れていたのは一瞬で、唇から離れていく。
家には家族だっているのに、見られたらどうするつもりだ。

「宿題手伝ってくれたお礼。ありがとね、バネさん」

「お、おう…///」

バタンとドアが閉まり、ダビデが帰った後も顔を真っ赤にしたままドアの前で立ち尽くしていた。






最初のうちは良かったけど、案の定オチが行方不明にorz