「バネ、これ覚えてる?」 そう言うサエの手にはアルバムが。 表紙を見る限り、幼稚園の時のようだ。 「部屋を掃除してたら出てきてね。懐かしいでしょ」 サエがアルバムを開くと、そこには園服を着た小さいサエと俺が写っていた。 俺にもこんな時代があったんだなぁ… 「これは運動会の時だよね」 リレーの時の写真だったり、玉入れの時だったり。 しかしどの写真にもサエは女の子に囲まれていた。 「サエはこの時からモテてたよな〜」 「バネもその1人だったでしょ」 「なっ…!////」 不意に恥ずかしいことを言われ、黙ってしまった。 その頃は特別深い意味もなかったんだろうけど… 「あ、これ…」 と言ってサエが開いたページはお遊戯会の時のものだろう。 ふと目に入った写真に俺が写っていた。 が、その写真に写っている俺は何故かドレスを着ていて、その近くには王子様のような格好をしたサエもいた。 「サエ、俺ってこんな格好したことあったっけ…?」 「バネ覚えてないの?」 「…全く覚えてねぇ…」 何らかの劇をやっていたのは分かるんだが、何故俺が女装をしているのかが分からない。 「俺たちは白雪姫の劇をやることになったの」 「おう」 「最初に王子様役が俺に決まって、次に白雪姫役を決める時に立候補者が沢山いたんだけど…」 「そこが分かんねぇんだよ。何で俺が白雪姫の役をやってたんだ?」 「それは俺がバネを指名したからだよ」 こいつ今なんて言った。 何で男の俺を白雪姫役なんぞに選んだのか。 「でも、バネも指名されて嬉しそうにしてたけどね」 「ちょっと待て。話についていけねぇんだけど」 サエは淡々と話していくのだが、もう何がなんだか。 その頃から俺とサエって付き合ったのか? いやいや、そんな筈はない。 「まさかと思うけど、バネあの時のことも覚えてない?」 「あ、あの時…?」 まだ同じような出来事があったのか… もうあの頃の俺がわけが分からなすぎて疲れてきた。 「あれは確か、白雪姫の役も決まって劇の練習に入ったぐらいだったかな…他の白雪姫役をやりたかった子たちがバネが白雪姫をやることに大反対してね…」 そりゃ大反対もするだろう。 俺よりも可愛い子が選ばれないで、可愛くもない男を選んだのか。 そんなサエもよく分かんねぇ。 「俺はバネが白雪姫役がよかったからって言ったんだけど、バネがね…」 「な、何だよ…」 サエは俺を見て、ふぅと溜め息をついた。 なんだ、俺が何かしたっていうのか。 「バネが『俺はサエのお嫁さんになるんだもん』って言うもんだから、また女の子たちが怒っちゃって」 …は? そんなこと言った覚えねぇぞ。 でも何か覚えてるような気もしなくもないな… てか俺の顔今真っ赤なんだろうな… 「もちろん、俺は嬉しかったよ」 サエは俺の唇に啄むような短いキスをし、アルバムを物入れにしまった。 俺が紅い顔をさらに赤くしてると、サエが口を開いた。 「もしかしたら、俺たちは結ばれる運命だったのかもね」 なんて恥ずかしいことを何の躊躇いもなく言えるサエがちょっとだけ羨ましかったり。 40.5巻を見ると六角メンバーって違う小学校出身だったりしますよね。 ダビデとバネさん、サエと樹っちゃんは同じですけど。 |