今日は蔵の家に来ている。 先週は蔵が千葉に来たから、今週は俺が大阪に来た。 白「今日は春風に着てほしいもんがあんねん。 そう言って蔵がクロゼットから取り出したのは、 黒「おい、それ… 白「おん。こないだ言っとったメイド服や。 ああ、そういえば先週そんな話したな。 そのメイド服をどうするのかは、大方想像がつくが、一応聞いてみることにした。 黒「…そのメイド服、どうするんだ…? 白「そんなん、春風に着せるに決まっとるやろ〜。 やっぱりな。俺の予想は的中した。 だいたい、男の俺にメイド服なんか着させて何が楽しいのか。 白「てわけで、着てみてや! メイド服を持ち、じりじりと俺との距離を詰めていく蔵。 俺も後退りをしたが、もう逃げ場が無い。 白「なあ、春風ー。メイド服着てやー。 黒「そ、そんなふりっふりなモン着れるかっ!/// 白「…しゃあないな 急に蔵の目付きが変わった。 さっきまでの穏和な目付きとは違う、獲物を狩るような目付き。 俺がその目に怯んだのを蔵は見逃さず、噛み付くように口付けをしてきた。 すると、蔵は俺のシャツの釦を外し始めた。 流石にこれは不味いと思い、蔵の胸板をドンドンと叩く。 黒「んっ!? んーっ、んーっ!…っはあ…何してんだ、ばか…/// 白「だって春風が着てくれへんから…強行手段に… 黒「無理矢理着させようとするなら、着ねぇぞ… 白「え!? 分かった、分かった!すまんかった! 無理矢理着させへんから…な? 謝ってはいるけど、蔵は俺がメイド服を着てくれるのを期待している顔だ。 ここでメイド服着なかったら、蔵はそうとうへこむんだろうな… …仕方ない。蔵の我儘の1つや2つ、聞いてあげなきゃな。 黒「…分かったよ、メイド服着てやる。 白「ほんまに! すっごい嬉しそうな顔をする蔵。 そんな蔵の顔を見ると、俺も嬉しくなる。 本当はめちゃくちゃ恥ずかしいけど、蔵の為だし。 メイド服に着替えるから一旦蔵を部屋の外へ追い出す。 さすがに着替えるところは見せたくない。 ―――数分後… 着れたには着れたが… こんなの着た姿を蔵に見せるなんて、すげぇ恥ずかしい。 さっき着るなんて言ったのをちょっと後悔した。 だいたい、スカートって生まれて初めて穿いたけど、足とかなんかスースーする。 すると、トントンとノックする音が。 白「春風、着れたか? 黒「…おう、一応は… ガチャとドアが開き、蔵は俺の姿をみるなり、その場に立ち尽くしてしまった。 蔵はすごく嬉しそうなんだが、嬉しすぎて言葉が見つからない、って感じだな。 そんなに喜んでくれたなら、着た甲斐がある。 なんて考えてたら、突然蔵が肩をつかみ、耳元で何かを囁いた。 白「春風、俺のことご主人様って言うて? これじゃ、本当にメイドがやることみたいじゃねぇか。 メイド服は着てるけど、俺は蔵のメイドになったつもりはない。 さすがにそれは出来ない、というかやりたくない。 拒否の意も込めて蔵の肩を押し返す。 そうすると蔵は逆にさっきよりも近付き、耳朶に噛みついた。 噛みついたといっても、甘噛みだったけど。 そして、また耳元で囁いてきた。 白「な、メイドさん。ご主人様の言うこと聞けへんの? そんな色っぽい声で囁かれたら、人溜まりもない。 俺がまた弱まったところにさらに追い討ちをかける。 白「ご主人様の言うこと聞けへんメイドさんは、クビやな。 そう言うと蔵は俺から離れ、自分の机に座り、教科書とノートを開き始めた。 黒「なあ、蔵… 呼んでも蔵は反応してくれない。 …ちゃんと言うこと聞かなかったから、嫌われちまったのかな… 蔵は俺のことを気にする素振りも見せない。 ほんとに嫌われちまったかもしれない。 更に悪いほうへ考えていってしまっていたら、目から一粒の涙が零れ落ちた。 どんどん溢れてきて、涙が止まらない。 黒「うぅ…っ、ご主人様ぁ… "ご主人様"って言ったからか、蔵が振り向いた。 蔵は俺が泣いていて、ぎょっとした。 白「春風っ、どないしたんや? 黒「ご主人様、ちゃんと言うこと、聞けなくて、ごめんなさい…っ 白「そんなこと別に気にしてへんから、ほら、俺の服で涙拭いてええから。 蔵に抱きついて涙を拭く。 きっと目の回り赤くなってんだろうな。 ぎゅっと力を込めて抱き締めると、蔵は更に力強く抱き締め返してきた。 黒「ご主人様、俺のこと嫌いになった…? 白「そんなことないで。春風のこと嫌いになるわけがない。 その言葉がすごく嬉しくて。 また蔵にぎゅーっと抱きつく。 黒「ご主人様… 白「ご主人様やなくて、蔵でええよ。 黒「蔵、もうちょっとこのままがいい。 白「俺もや… こうして、俺たちはしばらく抱き締めあっていた。 ――後日 白「なあ、春風、今度はナース服着てくr… 黒「絶対着ねぇ!///// 相変わらず、オチが行方不明orz マサキ様からのネタ、「バネさんに女装させる白石」です 楽しく書かせていただきました! ネタ提供ありがとうございました! |