五時間目の休み時間。 次は全校集会で皆体育館に移動し始めているが、俺は校舎の屋上にむかっていた。 校長の話なんか興味ないし、他人が表彰されるのを見ても全く面白くないし。 屋上へ着くと、梯子を上ったさきに俺の特等席がある。 授業とかサボるときはいつもここにいる。 今日もいつも通り、ここで一時間過ごそうと思っていたが、先客がいた。 長身でもじゃもじゃ頭で左耳にはピアスをしている男子生徒。 きっと俺と同類なんだろうな。 男子生徒はまだ俺の存在に気付いていないようだ。 自分でいうのもなんだが、俺は学校でもかなり有名な不良生徒で。 俺がこの屋上に来るようになってから他の生徒はほとんど来なくなった。 本当にここは俺専用の場所になっていた。 「…あれ、君いつからいたと?」 寝ていた男子生徒が起きたようだ。 こんなもじゃもじゃ頭のやつなんて同じ学年にいたかな… そんなことを考えていたら、 「君、黒羽春風くんばいね」 突然フルネームで呼ばれ驚く。 俺が知らなくても、この学校で俺の名前ぐらい知ってるやつなんていくらでもいるか。 「…そういうアンタは?」 「俺?俺は千歳千里」 自分から聞いたのに、無視して立ち上がり、この場から去ろうとしたら、 「黒羽くん、放課後生徒会室に来んね」 何で生徒会室なのか、疑問はたくさんあったがが、取り敢えず行くことにした。 放課後、言われた通り生徒会室に行った。 生徒会室の両開き扉を開けると、部屋の一番奥にあるデスクに見覚えのある人物が座っていた。 「お、来た来た」 「アンタ、さっきの…」 そこにいたのは先程屋上で会った千歳だった。 「知らなかったと?俺はこの学校の生徒会長ばい」 俺は唖然とした。 生徒会長というのは学校に在籍する生徒のトップだ。 そんな人が全校集会を屋上でサボっていいのか。 「この学校にいる人なら皆俺んこつ知っとると。知らんのは多分君だけたい」 生徒会室に呼んだ理由は分かったが、問題は何故呼んだかだ。 意味も無く呼んだわけではないだろう。 「…で、何で俺をここに呼んだんだ?」 すると、千歳はどんどん俺との距離を詰め、近づいてくる。 俺もヤバイと思い後退りしたが、気付けば背中が壁につき、逃げ場を失った。 いざとなれば殴ればいいかなんて考えていたら、千歳がバンッと壁におもいきり手をつき、思わず肩を竦めた。 そして、鼻と鼻がつきそうなぐらい顔を近付けて、千歳は口を開いた。 「俺、黒羽くんのこつもっと知りたか」 そう言う千歳の顔は何だかとても厭らしくて、無意識のうちに見入ってしまった。 ふと我に帰ると、恥ずかしくなり頬が紅くなっていくのがわかった。 そんな顔を千歳に見せるのは(もう見られてたかもしれないが)御免だ。 顔を背けようとしたら、 「……っ!!///」 一瞬の出来事だった。 千歳が、俺の唇に、キスを… と思ったが、千歳の唇の感触は無く。 「ほんなこつちゅーすると思った?」 なんてからかわれた。 本当にキスされると思っただけに、すごく恥ずかしい。 さっきよりも一層顔が紅くなった。 何か言い返そうにも、あまりの衝撃に言葉が出なかった。 |