オマケ

 山崎は帰りたいと思った。

 夜の繁華街ド真ん中で、一方ではいい感じに酔っ払ったゴリラ1匹と黒と白のもじゃもじゃ2人がじゃれあい、他方では目つきの悪い2人が睨み合っている。

 そして俺は黒い笑みを浮かべた栗毛と何を考えているかわからない黒髪の長髪に挟まれて立っている。

 帰りたい。

 モーレツに帰りたい。

「沖田さん、明日もあるんで帰っていいですか?」

「何言ってんでィ、山崎。これからが面白ェんだろ。それに今日は金曜だぜィ、お前に明日の予定なんてねぇだろ」

 この人、ワザとだよ。

 絶対ワザとだよ。

「銀時も坂本も情けない。『酒は飲んでも飲まれるな』だろうが……ひっく」

 いやいやいやいや、赤い顔して何言ってんの?

 アンタも飲まれているから。

 それにヤバいのはもじゃもじゃたちでなく目つきの悪い方でしょうがぁ!

「旦那ァ、せっかく会えたんだし、場所変えていっしょに飲みやせんかァ?」

 アンタも何かわいい感じだそうとしてんですか?

 黒いオーラがだだ漏れだよ。

「お、総悟、いいこと言うなぁ。坂田ァ、次、次、行こう」

 だあぁぁ、ゴリラ、今アンタが捕獲するのはその白もじゃじゃねぇ。

 ゴリラ、機動隊だろう!

 税金で食わせてもらってんだろう!

 たまには役に立つゴリラになれェ!

 あの凶悪な2人をなんとかしろぉ!!

 黒もじゃといっしょになって何してんだあぁぁ!!!

「そうじゃ、金時のうちで飲むぜよ」

「金じゃなくて銀な、もじゃもじゃ。ん〜、んじゃ、俺んち来るぅ?」

「いいんですかィ?そうと決まれば移動でさァ」

「ほら、お前も行くのだろう。皆、行ったぞ」

 長髪ゥ、こんなときに覚醒すんなァ。

 頼むから俺のことは忘れてェ。

 …帰りたい。

 帰りたいよぉ。

「お、ジミーもいるじゃん。行こうぜ」

 あ、旦那。

 なんつーか、かわいいです。

 もう、いいや。

 あの凶悪な2人はあのままで?

 ま、いいか。



 *



「あ、電話。なんだ総悟?」

『土方さん、アンタんちで飲むことになったんで、酒とつまみ買って来てくだせィ。俺たちはアンタんちに向かってるんで』

「……。総悟、手前ェ」



「銀時?」

『おぉ、高杉じゃ』

「死ね、もじゃもじゃ。なんで銀時の携帯からかけてくんだ」

『死ねとはひどいのー。ほれ、銀時』

『もしもし、高杉?ケーキ、買って来て』

「…………なんのケーキだ」



 週末の夜は更けていく。



(了)

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