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また明日




*財→ユウ前提財前×モブ子
苦手な方は注意です。








恋を語れるほど多くの恋をしてきた訳ではないけれど、今まで付き合ってきた誰よりも貴方に恋をしているんです。

「財前君って私に興味ないでしょ」

そう言われてふられたのはつい一分前。
付き合っていると言っても一か月に満たない間だけだったし、思い入れもなにもなく終わった。
告白されてなんとなく付き合いはじめたけれど、別れるときはそれなりに責められた。
もっと構って欲しかった、私のことを好いてくれていると感じられなかった、学校内はともかく帰りくらい一緒に帰れなかったのか。どれも言われてもしょうがないと思えることではあったが、ひとつ、他に好きな人がいるんでしょう、これだけは堪えた。

「誰かから聞いたんか」
「聞かんでも分かるわ。自覚ないん?財前君私と話してても上の空で窓の外眺めとるし、部活中はえらい楽しそうにしとるくせに終わると無愛想になるし、そんなん毎日見とったら気づかん方が可笑しいでしょ」
「そう見えとったんか」

自覚はもちろんあったが、他人からそう見られてるとは初耳だった。
自分ではうまく隠しているつもりだったのに。

「別にええけどね。もともと私が無理矢理付き合おうって言ったんだし。で、その好きな子って誰?部活終わるとーってことは、テニス部のこ?それともマネージャー?」
「いや、そう言うんのは」
「なんだ秘密か。いいけどね。でも少し興味あるわぁ。財前君の好きな人」
「好きっちゅうか」

憧れと言うか。話していると楽しくなる、そんな人だ。
傍に居るとなんとなく落ち着かなくて、誰かと一緒にいるのを見るともやもやする。
一緒にいたいけど、一緒にはなれなくて、楽しいけど、楽しくない。

「好きかもしれへんっちゅうか」
「歯切れ悪いなぁ。それってただ好きな人に近づいてくる人に嫉妬してるだけでしょ。そんだけその人の想ってるってことやん。立派に好きな人やないの」

好きな人に立派も何もあるのかは分からないけど、彼女の言ってることは正しいような気がした。

「好き、なんや、俺」
「そうやろな」
「なあ、もう一つ聞いてええか?」
「ええけど。何?」
「その人、もう好きな人おってな、付き合ってるとかはないんやけど、どうしたらええと思う?」
「そんなん」

財前君がそのこに好きって言って、相手に意識させて、気持ち揺らいでる時にもうひと押ししたら大体の女の子は答えてくれるんとちゃうかなぁ。

「なんやそれ。上手くいくんかいな」
「やってみないと分からへんやろ。とにかく相手に自分のことを意識してもらわんと話にならないし。大丈夫やって。財前君イケメンやん」
「イケメン関係あらへん。あの人中身重視や」
「イケメンで無愛想でも、財前君って案外人のこと見てるし、優しいから、なんとかなるって」

為になったんだかどうなのか分からないアドバイスを貰って、そろそろ帰るという彼女を門まで見送る。
最後くらい家まで送ると言ったのに、別れ話の後に未練がましいから、と断られた。

「今日は楽しかったわ。なんか、一か月付き合ってて一番面白かったかもしれへん」
「今日はありがとな」
「ええって。財前君も頑張って。応援してる」
「ああ、じゃ」
「うん、またね」

彼女との別れに今更ながら少しだけ寂しさを感じた。
恋人として好きにはなれなかったけど、付き合わなければこうして話すこともなかったようなこだったし、何より彼女の言う通り、少しだけ楽しかった。
恋とは呼べない仲で始まり、結局愛なんてものは生まれなかったけれど、それでも楽しかった。
最後にはこうして話したりもして、友人としては上手く言っていたんじゃないかと思う。
愛を語れるほど多く人を愛してきてはいないけど、貴方へ抱く感情は彼女とは比べ物にならないくらい大きい。

「あ、財前君!財前君、いい人やから自信持ってええよ!」
「そんなん、分かっとるわ」
「可愛げないなぁ、じゃあ、また明日!」

だから、今日少しだけ押された勢いにまかせて、また明日、貴方に会いたい。






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『好きと言わないで』をテーマにふたつくらい書こうかと思い始めた財前視点の一発目。
もうひとつは小春ちゃん視点かなぁ、と思っていましたが、財前視点が思っていたのと違う展開になってしまったのでまた別のシチュでも書きたいです。
モブ子と財前メインでユウジがまったく出てこないし、普通の財ユウ求めている方にはごめんなさい。








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