首に宛がわれた親指にグッと力が入る。ヒュッと鳴る喉は酸素を取り込めず、だんだんと苦しくなってきた。生理的な涙が頬を一筋伝い、ボーッとしてくる頭の片隅で、私はしんじゃうのかなぁ。なんて緩く考えていたら、急に手を離された。急に入り込んできた空気に噎せ、咳き込む私をゴミを見る様な目で見下す彼、無神コウくんは、つまらなそうに舌打ちをするともう一度私の首に手をかけた。息が出来なくて、苦しい。

「っ、」

声も出ないからコウくんに苦しいと訴えることは出来ない。脳に酸素が回らず混濁する意識の中で、私はコウくんに手を伸ばした。どうして泣いてるの。美しいガラス細工のような瞳からポロポロと零れ落ちる雫は私の頬を濡らし私の涙と混ざりあった。

「俺も、苦しいよ。」

首を絞める手に更に力が入る。あ、だめだ、とびそう。しかし意識を失うギリギリで手をパッと離され、先程と同様に激しく咳き込む。肩を上下させ肺に酸素を取り込む私をコウくんが組敷くと、涙で潤む瞳が近付いてくる。そのまま私の首筋に牙をたて欲望のままに血を貪るコウくんが酷く人間らしくて、吸血しているにも関わらず、彼がヴァンパイアだということを忘れそうになる。

「コウ、くん」

首元に顔を埋めている彼の名を呼び、そっとふわふわの髪の毛に触れるとコウくんはピタリと吸血をやめた。

「コウくん、すきだよ」

私がそう告げるとコウくんは何も答えずに再び首筋に牙をたてる。甘い痛みが全身を巡り、脳みそがずぶずぶに溶けていくような感覚に陥る。コウくん、あなたの傷みを私も背負いたい。そう願いを込めて触れた彼の背中は、ひどく冷たかった。



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