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caution;
01 旦那がいるにも関わらず他の人に心揺れる話です。不徳だと嫌悪感を抱く方もいるかもしれません。
02 大人マルコと若者サッチに取り合いされる設定です。サッチが若いです。おそらく20代前半。ちなみにマルコ(夢主の旦那)は原作寄りで30代後半。若ッチをどうしても一度書いてみたかったんだー。

なんかよく分かんないけどとりあえずクレームはつけないよ、という心広い方のみどうぞ。




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結婚して早数年。今の生活の全てを放り投げたいわけじゃない。ただ、同じことを延々と繰り返すだけの毎日に閉塞感を覚えている。
夫を愛していないわけではない。あの人との結婚を決めた理由は、圧倒的な包容力だ。何があっても動じず、受け入れて包み込んでくれるその大きな人柄に、心を奪われた。この人とならきっと幸せになれる。そう思ったのだ。それが今じゃどうだ。ふたを開けてみれば包容力は無関心という言葉に成り下がった。なんでも同意してくれるというのは包容力なんかじゃない。そりゃ私だって分かってる。仕事が忙しすぎるのだ。月の半分は出張で飛び回っているから、たまに家に帰ってきたらゆっくり休みたいんだろう。でも、

「私は家政婦じゃ、ないっ、つうのっ」

はぁはぁ。
スーパーからの帰り道、自転車を必死に漕いで坂を上りながら、私は愚痴った。っていうか5月のくせになんでこんなに暑いのか。地球温暖化が与える影響ってのは思った以上に広く、私のような一介の主婦レベルにまでご丁寧に影響を及ぼして下さるらしい。


「あーもう汗だくじゃん」

シャカシャカ鳴る袋をダイニングテーブルに置いて、時計を見る。1時55分だった。今日は2時頃に宅急便が届く。時間指定で頼んでおいたのだ。もしかしてもう届けに来てくれてたりしてと心配になった私は、パタパタとシャツを引っ張って胸元に風を送り込みながら、留守電を横目に、玄関を出て郵便ポストに向かった。不在届けが入っているかもしれないと思ったけど請求書やダイレクトメールがあるだけだった。着信もなかったから、うんまだ来てない。よかった。再送となると連絡をしたりなんやらで面倒くさいからね。

「よかったよかったー」

独り言を言って、玄関の扉を閉めようとしたら「あ、」男の人の声が聞こえた。

「ん?」
「あぁよかった。白猫宅急便です。こんにちは!」

振り返った先には、頭に載せた帽子を軽く持ち上げて、ニカリと笑顔を振りまく青年がいた。目元の傷跡でさえ不思議と愛嬌があるように見えて好印象だ。ぺこりとおじぎをする仕草は礼儀正しくて(なんか、可愛い)ストライプの制服がとても似合っている。

「お届け物です。さっき通りかかった時寄ってみたんだけど不在だったようで、」
「あれ、不在届けありましたっけ。見落としちゃったかな」

「あぁいや、指定の時間より早かったからまた来ようと思いまして」
「そうだったんですね。私もついさっき戻ってきたばっかりで。わざわざごめんなさい」

荷物を確認して、印鑑を押す。
そんな当たり前のやりとりの中で、当たり障りのない会話をした。

「いやいやそんな。それにほら、今ちょうど2時ぴったし」

どうだすごいだろとばかりに胸を張って、にっと笑った顔はまるでいたずらっ子みたいで、細まった目に合わせてひっぱられた目元の傷跡がやっぱりとても可愛く見えた。

「大切なもの、時間通りにお届けします。こんにちはあなたの街の白猫宅急便、でした!」
「ぷっあはは。なにそれ」

きっと社内の標語かなにかなんだろうけど。帰り際そんな台詞を言いながら、またぺこりをお辞儀をした青年に私は小さな癒しを感じた。


「…サッチ、君かぁ」

配達担当者の名前をちゃっかりチェック。また会える可能性なんて殆どないってことは分かってるけど、しっかりとその名前を暗記してしまった。

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