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▼ When one door shuts,another opens

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今、私とマルコさんは二人でカフェにいる。

何故か。
マルコさんに誘われたからだ。
紳士的な態度で当たり前のように言われたから、私も当たり前のようについてきてしまった。

「あの最初にいっておきますけど、私ちょっと抜けてるってみんなによく心配されるし、嘘つかれてもたぶん見抜けないと思うので、悪いことするつもりならやめてくださいね」

詐欺とか。
今更かもしれないが、先制パンチを打ってみる。いや、すでに後制パンチかもしれない。そんな言葉あるのかしらないけど。

マルコさんは目を丸くしてしばらく私を見つめた後、可笑しそうに笑った。

目元に少しだけシワが出来た。
可愛い笑顔だな、と思った。

ひとしきり笑った後「あぁ気をつけるよい」とマルコさんは優しく言った。

「詐欺も危ねぇが、アンはナンパも気をつけろよい」
「それは大丈夫です。ナンパってもっとなんかすごいお化粧をした綺麗な人がされるものだから」

全然平気です。問題なし。
私がにっこり笑ってそう言うと、マルコさんはまた目を丸くして笑った。

「あ、でも別れたばっかりで傷心中だから気をつけます。今ナンパされたらうっかり騙されそうです」

簡単に説明した。
エースという名前をついぽろっと出してしまったらマルコさんはまた驚いた顔をして「あぁなるほどねい」と私の顔をまじまじと見つめた。知り合いだったらしい。

「なんだ。エースの知り合いならよかったです。知らない人に着いて行ったらまた友達に怒られるから」

私はよかったよかったとへらっと笑う。
別れてつらくないのかと尋ねられた。

「辛いけどしょうがないです。もう頑張れなかったから。それよりも私はエースが心配です」

昨日思ったことをマルコさんに話してみる。
友達が多すぎるエースは本当に辛い時に打ち明けられる人がちゃんといるのか、一緒に泣いて怒ってくれる人はいるのか、それがすごく心配だと。
黙って聞いていたマルコさんはまたほんの少し驚いて悲しそうに笑った。

「…エースは馬鹿だねい」


「知り合いなら、ナンパにはならないだろい」

ナンパじゃなくて出会いだ。
帰り際に名刺と共にそう言ったマルコさんは台詞とは裏腹に、とても紳士で大人だった。

そうか。これは出会いなのか。

友達に今日のことを話したら「馬鹿じゃないの?」と呆れられて、名刺を見せたら「頑張りなさい」と言われた。



昔々、とある王子は云いました。
−私たちが出会ったことは神が決めた運命に違いない−

運命なんていらないけど、あなたと出会えて少しうれしい。



When one door shuts,another opens.
一つのドアが閉まるとまた別のドアが開く

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