▼ A friend in need is a friend indeed
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あれから連絡はない。
いや、あれからも連絡はない。
随分とあっさりしたものだ。
もしかしてエースの中ではもう終わってたのかもしれない。
「だからあんなに驚いたのかな」
ぽつり言葉を落としてみると、胸が痛む笑いが零れた。
エースと別れたって友達に言ったら「よく頑張ったね」って抱きしめてくれた。
あれから部屋に戻っていない。
一人になるとすごくすごく悲しくなるのが分かっていたから友達の家に泊まっている。
エースに比べたらきっとミジンコみたいな私の友達ネットワークに情報が流れたらしく、泊めてくれる友達はたくさんいた。まだ実感の湧かない私の代わりに泣いて怒って騒いでくれた。
たくさんはいないけど、大切な大切な友達。
きっと宇宙の広さくらいたくさんいるだろうエースの友達は、エースをこうやって守ってくれるのかな?と少し心配になった。
私は両手に抱えられるくらいの人たちしか守ってあげられないから。
一人で買い物のような放浪のようなことをしに街に出たら、なぜか携帯をなくした。
いいきっかけだと思った。
別れたって結局未だに待っていたから。
でも友達と連絡がとれなくてほとほと困った。
どうやら電話BOXというものは絶滅したらしい。きっとどこかにはあるんだろうけど、私には見つけられなかったから私の中では絶滅した。
番号はメモってあったけどこれでは意味がない。
「困ったなぁ」道端でそう呟くと「どうかしましたか?」と返ってきた。
とても穏やかな声だった。
振り返るとそこには、高そうなスーツになんだかバナナみたいな髪型の男の人。
昔々、とある姫は云いました。
−この塔から出て新しい世界がみたいの−
新しい世界は、今どき道端にでも落ちているらしい。
A friend in need is a friend indeed.
まさかの時こそ真の友
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