▼ A drowning girl will catch at a straw
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耳元で響く軽快な音楽。
エースの好きな洋楽だ。
なんとかっていうバンドでこれはエースの携帯の呼び出し音。
テンポの速い楽しげな音楽と裏腹に私の気分は急降下。
聞こえれば聞こえるほど、私のテンションは下がる。だって、電話に出ないってことでしょ?
「ん。おぉアンか?」
「ッエース!」
また出ないか、と切ろうとした時に耳に雑音が届く。
あ、出た。
私は自分でかけておきながら焦ってどもってしまった。
「あぁ悪ィ、今飲み会でよ」
どうした?なんか用か?
まるで、私には声さえ聞かせないよと悪魔がいたずらでもしているように楽しそうな笑い声がエースのそれをかき消す。
「あ、ううん。なんでもないの。ちょっとかけただけ」
声を張り上げる。
「ん?そうか?「エース君!■△#*」プツッツーツーツー」
女の子の可愛い声がエースを呼んだと同時に電話が切れた。
一人の部屋で大声を出していた私は少し恥ずかしくなって、それから寂しくなった。
たぶん電波が悪かったんだと思う。さすがにこのタイミングで電話を切ったりはしないから。
でも折り返してはこない。
かけるならもう一度私から。
これはいつの間にかできた二人の“定番”。嫌なほうの。
友達の何気ない一言が蘇る。
「電話に出てくれるだけでうれしいって、あんたほんとに付き合ってんの?」
昔々、とある姫は云いました。
−王子様と一緒にいられるのなら、この身も声も差し出しましょう−
あげたくたって、受け取ってもらえないなら意味ないじゃない。
A drowning girl will catch at a straw.
溺れる少女はわらをもつかむ。
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