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▼ 節約しましょう

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私の彼氏は貧乏だ。
昼夜を問わずバイトをしているから収入はあるはずなのに、常にお金がない。理由は簡単。食べすぎだ。ちなみに食欲と性欲はなんとやらとはよく言ったもので、…まぁそういうことだ。

「ただいまぁー」
「おぉアン!おかえり!!」

仕事が終わって帰って来ると、何故だかいつも私の部屋にいるこの人が私の彼氏エースだ。ベランダで機嫌よく洗濯物を取り入れていたかと思ったら顔を見た瞬間、猛烈なスタートダッシュを決めて飛びついてくる。

「エース待て。暑い」

部屋にいたら分からないだろうけど、外は灼熱地獄なのだ。
チェーッと口を尖らせて渋々離れるエース。本気で暑いのに、そんな顔を見ると可愛いだの可哀想なことしただのと思ってしまう時点で、私も大概だと思う。

ちなみにエースは家事がプロ級だ。自分だってバイトで忙しいはずだけど、私がいない間に全てを終わらせてくれている。エースは尽くすタイプなのだ。顔は所謂イケメンってやつだし愛想もいいからものすごくモテるはずなのに、エースは私と付き合っている。私がそっけないからだ。エース君エース君とちやほやもて囃してくる女はうっとおしいのだとか。簡単に言うと尽くしたいだけ。そんなエースに私はドンピシャスクリーンヒットだったらしい。

「エース、邪魔」

次の行動を読んでエースがクローゼットから部屋着を取り出す。手渡してくれたらそれで済むものを、そこで終わらないのがエースだ。

「ねぇ、」
「手伝ってやるって」

「服くらい自分で脱ぎたいんだけど」
「んー?」

いや、聞こえてたよね今絶対。
さすがに突っ込もうかと思ったけど、開いた口からは出たのは何故だか言葉じゃなくてため息。1秒後に小さな笑い声。4秒後は吐息。

「エースちょっ、と」

後ろからシャツに手が回ったと思ったら、あっという間にボタンを外してしまう。
そのまま抱きしめられて首に顔をすり付けてくる。どさくさに紛れて何度も触れるのは、当然唇。

「ふふふっエースってば」

こそばいよ、と言いながら後ろを振り返ってキス。ちょっと苦しい角度で唇を合わせると魔法のように向きが変わって深くなる重なり。

「…一回だけよ」
「聞こえねぇ」

確かもうゴムがないはずだと思い至ってそれを告げると、「節約だな!」なんて非常にさわやかな笑顔で言ってのけるもんだから、怒るのも忘れて笑ってしまった。


【節約しましょう】




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