▼ read the sky
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「エース!」
「おぉ、どうした?」
あのね、さっきサッチがね、
甲板の隅にいる私の耳に楽しげな声が聞こえてくる。
エースと戦闘員の女の子。
とても明るくて元気でかわいくて。みんなの人気者。
エースの、好きな女の子。
二人は甲板のど真ん中でキャッキャキャッキャと大声で騒ぐ。
「あいつらまたやってら」
「いいなぁ。若いって」
甲板を掃除していたクルーの先輩たちがモップを持つ手を止めて、二人を穏やかに、少し羨ましそうに眺める。
「ちゃんと掃除してください」
手、止まってますよ。
わたしは先輩クルーをたしなめながら、モップをトントンと床に軽く叩きつける。水気を含んだそれは、ペチャペチャと情けない音を立てた。
「え!まじで?やったっ!」
にくー!今日はにくー!でかいにくー!
どうやら今日のメニューを伝えに来たらしい。あの子は女の子の割にはすごく食べるから。エースと一緒ににくーにくー!と楽しそうに笑っている。
あ、手つないだ。
わたしはただの雑用係。あの子はどこにそんな力があるのか、とても強い戦闘員。
とても明るくて元気でかわいくて。みんなの人気者。
エースの好きな子で、
「ほらっ!アンも早く行こうよー!!」
全然目立たない私をいつも気に掛けてくれる、大切な大切な親友。
「先行ってて?」
見上げた空は青く、高く、途方もなかった。
【到底叶わぬ恋】
叶うことさえ、願ってはいけない。
…ていうか、エース隊長掃除サボってるし。ポツリ呟いた言葉に一人ふふっと笑った。