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「エース!」
「おぉ、どうした?」

あのね、さっきサッチがね、
甲板の隅にいる私の耳に楽しげな声が聞こえてくる。

エースと戦闘員の女の子。
とても明るくて元気でかわいくて。みんなの人気者。
エースの、好きな女の子。

二人は甲板のど真ん中でキャッキャキャッキャと大声で騒ぐ。

「あいつらまたやってら」
「いいなぁ。若いって」

甲板を掃除していたクルーの先輩たちがモップを持つ手を止めて、二人を穏やかに、少し羨ましそうに眺める。

「ちゃんと掃除してください」

手、止まってますよ。
わたしは先輩クルーをたしなめながら、モップをトントンと床に軽く叩きつける。水気を含んだそれは、ペチャペチャと情けない音を立てた。


「え!まじで?やったっ!」

にくー!今日はにくー!でかいにくー!

どうやら今日のメニューを伝えに来たらしい。あの子は女の子の割にはすごく食べるから。エースと一緒ににくーにくー!と楽しそうに笑っている。

あ、手つないだ。

わたしはただの雑用係。あの子はどこにそんな力があるのか、とても強い戦闘員。
とても明るくて元気でかわいくて。みんなの人気者。
エースの好きな子で、

「ほらっ!アンも早く行こうよー!!」

全然目立たない私をいつも気に掛けてくれる、大切な大切な親友。

「先行ってて?」

見上げた空は青く、高く、途方もなかった。


【到底叶わぬ恋】
叶うことさえ、願ってはいけない。

…ていうか、エース隊長掃除サボってるし。ポツリ呟いた言葉に一人ふふっと笑った。





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