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「好きです!つ、付き合ってくださいっ」
「いやだ」

「お、お肉っ!毎日あげます!」
「なにー!ほんとか、じゃあいいぞ!」

たった今、まさに目の前で大切な弟のカノジョになったこの女を、俺は密かにずっと好きだった。柄にもなく片思いというものをしていた。結構長い間。

「エースさんありがとうございます。適切なアドバイスのおかげで付き合えました!」
「おう。まぁどうってことねぇよ」

アンは抜けている。おまけにドジだ。当然俺の意外に繊細な心なんて知る由もない。確かに俺はルフィは肉が好きだと言ったことはあるけど、別にアドバイスしたわけじゃねぇ。当たり前だろ?何で自分の好きな女のレンアイに協力すんだよ。

俺とアンはバイト先の仲間だった。最初はずいぶんトロいやつだと思った。話をしてみると、アンはなんとルフィと同い年だった。つまり高校に入ったばかりだ。そんなやつが働くのかと驚いた。ルフィには絶対無理だ。や、ルフィだってやればできる。なんてったって俺の弟だからな。
大学に入っても同じバイトを続けていた俺はいわゆる古株だったのでアンの教育係になった。
何をやったらそんな状況になるんだ、と感心してしまうくらいアンはわけのわからねぇ失敗をたくさんやらかした。バカなやつほどほっとけねぇって言うだろ?俺にとってアンはまさにそれだった。なにをしでかすか分からねぇからとにかく目が離せないアンを、俺は常に目の届く範囲に置いておいた。
最初は単にほっておけねぇバカ女だと思っていたが、いつの間にか心配ばっかりかける妹に昇格していた。そして気がつけば、アンに惚れていた。こいつには俺がついててやらねぇといけないと思ったし、守ってやりたいとも思った。

アンとバイト以外でも会いたくなった俺は、ある日勇気を振り絞ってデートに誘った。
あっさりついてきたアンに「警戒心がない」と怒ったけど「エースさんでもだめなんですか?」とアンはケロッとしていた。なんで??ときょとんと不思議そうにするアンを心底可愛いと思った。

初デートは映画に決まってんだろというばかサッチのアドバイスの通り映画館に向かう道すがら、隣を見るとアンがいて、それだけで俺はすごく嬉しかった。幸せを噛み締めながら歩いているとルフィとばったり遭遇した。アンはルフィに一目惚れした。
正確には一目惚れとは言えないかもしれない。バイトの休憩中に散々ルフィの話をしてたから。俺の話に出てくるルフィはとんでもなくどうしようもないほどのバカに映っていたらしく、実際に会ってみるとその反動かすごくしっかりしているように見えたらしい。

「ど、どどうしようエースさんっ!私ハツコイかも・・!」

この時のオレの気持ちが分かるか?
なんでルフィなんだよ。確かにルフィは最高だ。ちょっとバカだけど。いや、でもただのバカじゃねぇんだ。ルフィは人を惹きつける。俺の自慢の弟だ。

でも、
【なぁ、なんで俺じゃねぇんだ?】



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