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▼ 片重い

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ンっ
はぁ

私とエースはベッドの上。
もつれ合っているのかといえば、違う。気持ちの高まり具合でいえば、正直言って今すぐにでもエースのものが欲しいくらいだけど。エースはベッドに腰掛けた私を優しく包み、啄むようなキスを何度も、何度も繰り返している。つまりまだ前戯とも言えない段階だ。

唇をかぷかぷ、カプカプ。
それに満足したら少しだけ舌を遣って、またかぷかぷ。
本格的なディープキスに至るまでの過程が長い。

手は私の腰を抱きしめたり、背中を撫でたり、首筋や耳に触れたり、頬を包んだり、頭を撫でたりする。私の髪を指にくるくる巻きつけて笑ったりもする。エースは両手で頭というか頬というか、つまり頭全部を包みながらするキスが一番好きらしい。でも腰にも手を回したいし、背中とか腕とかにも触れたいらしい。

「手が足りねぇ」

あと2本ありゃ、両方できんのにな?
エースは唇を合わせたまま、笑いかける。

随分甘い。
そう、甘いのだ。

正直な気持ちを言うと、な?と問いかけられても答えに詰まる。私は別にどちらでもいいし、むしろ早く先に進んでくれたほうがうれしい。
身体の芯がじんじん疼いてしょうがないのだ。でも私は「そうだね」と笑い返す。

ウソをつくわけだ。
だってこれは虚構の関係。

私とエースは付き合っていない。端的にいえば、いわゆる身体だけの関係。私はエースを別に彼氏の対象として見ていないし。付き合いたいとは全く思わない。エースもそうだと思う。エースは私の他にもいっぱい女の人がいるみたいだから、私はその一人に過ぎない。

だからこれはニセモノの関係。
ウソで薄っぺらくて、どちらかがヤメと言ったら終わる関係。

エースはこうやって甘く甘くスルのが好きなのだろう。エッチの嗜好なんて人それぞれだから、わたしも特に文句はない。焦らされるのはちょっとイヤだけど、その分感度が上がってとても気持ちいいからそれにも納得している。どうせヤルならキモチイイほうがいいに決まってるし。

いつまで経ってもベッドに押し倒しもしないで繰り返される甘い甘いトロけるようなキス。
私はその合間にふふっと笑った。

「これじゃ女は勘違いするね」
「・・・だな」

エースは何故だか少し眉を下げて笑った。
あぁしまった。エッチの嗜好を否定したいわけじゃない。
私は言葉を付け加える。

「エースのエッチ、大好きよ?」



想い重い、
【片重い】





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