※死ネタです(ギン独白)






あぁ、彼女が泣いている。おかしいな、彼女が泣かないですむように、−−−−ただそれだけが望みだったはずなのに。



−−−−ギンっ!!



彼女が呼んでいる。答えなければ、そして泣かないでと伝えたいのに、開いた口からは乾いた音しか出てこない。


彼女が泣いている。せめてその涙を拭いたいのに、腕は動かなかった。−−−あぁそうか、腕はもはや存在しないのだ。


彼女の姿が霞んでいく。少しでも長く彼女の姿を瞼に焼き付けたいのに、意志に反して瞼が重くのしかかってくる。



まともに顔を合わせたのは何時ぶりだろうか。彼女が奪われたものを取り戻すため、彼女から離れた。彼女を守りたくて距離を置き、いつの間にか彼女との間には大きな壁が隔たれていた。だが、それでも良かったのだ。彼女がただ幸せに日々を過ごしてさえいてくれたら、それを遠くから見守るだけで良かった−−−−彼女が笑顔でいてくれればただそれだけで






喰うか喰われるか、明日の食にも困る流魂街で、行き倒れた彼女に出会った。彼女を助けたのは気まぐれに過ぎなかった。だが、彼女と目があい、言葉を交わした瞬間、心に空いた穴が少し埋まった気がした。

彼女に生きる上での知恵を教える一方で、彼女は自分に『心』を与えてくれた。泣くこと、笑うこと、怒ること、すべてを彼女と共有した。特に彼女の日だまりのような笑顔は、ボクの心を満たしてくれた。そして思ったのだ、−−−−−この笑顔を守り抜きたいと。
だからこそ、彼女の一部を奪った死神を見つけた時、自分が取り戻さなければと−−−





−−−だが結局取り戻せなかった。叶わなかった。最期の最期まで泣かせてしまった。彼女は今自分のために泣いてくれているのだ。

そこまで考えて自分の矛盾に気づいてしまった。−−−あぁ、彼女を泣かせたくないと願いながら、彼女を泣かせているのは自分自身だったのだと。

(ごめんな、乱菊)
願わくば、彼女が誰よりも幸せになるように








願わくば、
(彼女が笑顔でいてくれますように)








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