「じゃあ、帰ります。海音寺さん、失礼します」

「おう、じゃあな。テスト勉強するんじゃぞ」

「……まあ、気が向けば」

「数学が悪いと、監督の特別講習じゃぞ」

「数学と地理は頑張ります」

「地理?」

「まぁ、訳ありで……」

巧の視線が泳ぐ。
それに、ようやく復活した瑞垣が気付く。

「なに姫さん。なんかしでかしたん?」

「いや……俺らの地理の先生が、」

「あ、あの変態オヤジじゃろ?女子にベッタベタな」

「そうなんです。それで、成績悪いと、“二人っきり”で課題をやるんです」

「うわぁ、新田東大丈夫か?危ないんと違う?」

瑞垣が顔をしかめる。
海音寺も、若干引いている。

「そういう訳で、地理は頑張ります」

「あ、せやったら、俺、教えたろか?」

「は?」

「地理やろ?あんなん簡単やし、教えたるよ」

「瑞垣、頭ええからな。原田、教えてもらったらどうじゃ?」

あんた受験生だろ、と思ったが、一人で勉強するよりずっといいだろう。

「じゃあ、お願いします」

「ほな、また今度。なんか連絡あったらケータイによろしゅう」

「あ、はい。さようなら」


こうして、定期試験前の家庭教師が決まり、三人は帰路に着いたのだった。





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