![](//img.mobilerz.net/sozai/1613_w.gif)
2
「海音寺さん」
店に入り、海音寺に声を掛ける。
すると、海音寺が立ち上がりながら、困ったように笑う。
「よっ。……悪い、原田。厄介者がおるんじゃ……」
「なぁに、一希くん。俊二くんとのデートなのに、彼女呼んだん?」
「は?」
「違うわ。原田は後輩。俺は、コイツと打ち合わせしとっただけじゃ」
「一希くんのいけず〜。で?そっちの美人サンは?」
巧の方は瑞垣であると直ぐに気が付いた。
一方の瑞垣は、全く気付いていない様子。
「原田、自己紹介せぇ」
「はぁ……新田東中一年の原田です。お久しぶりです、瑞垣さん」
「お久しぶり?俺、会った事ある?」
「そりゃもう、強烈に」
巧は、拳をにぎりしめて耐える。
思い出すな、平常心を保て、と言い聞かせながら……
「瑞垣、コイツが姫さんじゃ」
「は?」
「原田、フルネームと部活を教えてやれ」
「原田巧、野球部でマネージャーやってます。この前はピッチャーも兼ねましたが」
「……うそや、ありえへんて。あの秀吾相手に奪三振やで?まさかそれが女なんて……」
「男が女の制服着て堂々とファーストフードに入りますか?」
「……………」
巧は、何時もの事だ、と特に気にしてはいない様子。
海音寺は、瑞垣の反応の良さに笑いを堪えている。
瑞垣はというと……
口をあんぐりと開け、しばらく動かなかった。
「ああもう、秀吾が知ったらどーしましょ」
「は?別に門脇くんが知っても、大丈夫じゃろ」
放心していた瑞垣が頭を抱えて呻く。
巧と談笑していた海音寺が気が付き、言葉を返した。
「そうやない。アイツ、原田を倒すゆうて、毎日毎日素振りばっかやっちょる」
「いいじゃないですか。損はしませんよ」
「損て……なんや薄情やな」
「あ、忘れてた」
本気で困っている瑞垣を無視し、巧が鞄を漁る。
「海音寺さん、これ、返します」
![](//img.mobilerz.net/sozai/1610_w.gif)
- 24 -
[*前] | [次#]
[ top ]