ユニフォーム
「巧、帰りに家来る?」
家に帰り難いだろうと、繭が気を利かせて言う。
だが、巧は首を横に振った。
「先輩に、ユニフォーム返しに行く」
「海音寺先輩に、これからの事話すんじゃよ?」
「分かった」
「がんばり!!」
「うん。バイ」
門を出て、携帯を出す。
野球部のファイルから、海音寺の番号を見付け、掛ける。
『もしもし』
「野球部の原田です」
『あぁ、原田か。なんじゃ?珍しいな』
「先輩、今何処ですか?」
てっきり家に居ると思い掛けると、思いの外騒がしい。
『今?……駅前のファーストフードじゃけん』
「じゃ、そこに行きます」
『っは?おい原田、お前、くんのか?』
「あ……デート中ですか?」
『阿呆、違う。じゃけど……』
「すいません、直ぐ済むので」
『……分かった。待っとる』
巧はさっさと通話を切り、駅前まで走り出した。