夕食時。
洋三と広は酒を飲み、真紀子は青波を構い、青波は学校であった事を話す。
そんな、いつもと変わらない光景の中、巧だけはいつも以上に無口だった。

「ちょっと、巧。もう少し楽しそうにできんの?」

「楽しくないのに、フリなんてする必要ない」

今まで賑やかだった食卓が、静まり返る。
洋三はヤレヤレ、という表情をし、広はグラスを置いた。
青波は怪訝そうに巧を見つめ、真紀子は怒鳴る。

「なんなのよ、まったく!理由も言わないで勝手に機嫌悪くしないでちょうだい!!」

「……話したって、聴いてくれないだろ」

「えっ?」

「ごちそうさま」

巧が立ち上がり、部屋に戻っていく。
その背中を、青波が心配そうに見る。

「まったく……なんなのよ……」

真紀子の声が、淋しく響いた。
追いかけようとする真紀子を、三人が止める。

「今はそっとしとけ」

「何でよ、娘なのよ?!」

「真紀子、巧は大丈夫だよ」

「そうじゃよ。それに…姉ちゃん、今、見られとうないと思う」

「……そう、ね」




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