挫折


「どうも、永倉くん。一年?」

「あ、はい」

「あの、原田って奴も?」

「はい。それが?」

「いや〜、随分手強いなぁ思うて」

「はぁ……」

「でもな……永倉。お前がいつまで捕れるか。それの方が興味深いねん」

「えっ?」

「さっきの速い球、取れんかったやろ?原田が速くなった時、お前、取れなくなるで」

「っ……」

「ま、俺には関係あらへんけど」




豪のミットが、揺れてる。
瑞垣さんが、揺らした。

でも、俺も揺れてる。
あの大会が蘇る。

駄目だ、しゃがむな。
意地でも、投げるんだ。

今まで一度も、弱音を吐かなかっただろ?

俺には、投げることしか出来ないから

でも、限界だ


ボールが暴れる

揺れる巧の心のように……

崩れていく、バッテリーのように……



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