マフィン


教室で外を、正確にはグラウンドを眺めていた巧に、海音寺のファンだと有名な女子が話し掛けてくる。

「原田さん、海音寺先輩が呼んどる」
「ん、さんきゅ」
「いいえー」


以前は、何で原田さんがマネージャーなんだ、ズルイ。と騒いでいたが、あまりにも巧が相手にしなかったので、気付いたら懐かれていた。
曰く、その何にも屈しない性格が素敵!だそうだ。


「キャプテン、こんにちは」
「おう。原田、仕事じゃ」
「はい?」
「門脇君と、瑞垣が来とる。合同練習の話し合いじゃと」
「はぁ……今からですか?」
「あぁ。今日は午前授業じゃけん、もう学校も終わりじゃ」
「……そうでしたっけ?」


などと会話しつつ、一緒に教室を出る。
海音寺先輩もカッコイイけど、原田さんもイイ!!
そう叫ぶ声が聞こえて、二人は苦笑を漏らした。



「よっ姫さん、ついでに海音寺も」
「何じゃ、ついでとは。門脇君、久しぶり」
「おう。原田、調子は?」
「調子も何も、投げてないし投げませんよ」
「そうか……」
「そんなしょんぼりするなや、みっともない」

駅前のバーガーショップで、わーわー騒ぎながら話し合いを進める。
日時や場所は勿論、参加人数の確認や、昼ご飯や巧のオヤツ等を決めていく。

「は?マフィンが食べたいって……」
「えぇやろ、姫さん。俺、姫さんの作ったの食べたい」
「原田のマフィンか……美味かったぞ」
「バ海音寺。人の彼女の手作り食うなや」
「あほ、差し入れじゃ」
「瑞垣さん、マフィンはかさ張るのでやめて下さい。精々、クッキーかパウンドですね」
「しゃあない、パウンドでえぇよ」
「……瑞垣さん、」
「なんや?」

「マフィンなら、瑞垣だけに作りますから、我慢してください」
「姫さん……!!」


ああ、また始まった。
そう思いながら、海音寺と門脇は、バーガーにかぶりついたのだった。



甘い、甘い、マフィン



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