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「大分小降りになったので、そろそろ帰ります」
「んじゃ、俺は姫さん送ってから帰るわ」
「えー、俺が送るからチョウチンアンコウは海に帰って下さいよー」
「はぁ?なんでお前が送るん」
「原田もこんな奴に着いて行くなよ」
「お前に送られるのだけは絶対嫌だ。それに、送って貰うなら、彼氏だろ」
ふと巧が言った言葉に、場の雰囲気が変わる。
瑞垣は機嫌良さそうに笑い、海音寺はやっぱり、と納得した顔をし。
吉貞は、この世の終わりのような顔で二人を交互に見て。
そんな吉貞を無視して、巧は海音寺の方を向く。
「じゃ、そういう事なんで、帰ります」
「そうじゃな。早う二人になりたいもんな」
「そうそう。ほな、また今度。海音寺、試合についてまた電話する」
「おう。じゃあな」
先程までの雨が嘘のように上がり、空には綺麗な虹が出ている。
その虹を見ながら、二人は手を繋ぎながら、ゆっくりと歩いた。
雨と、恋人と、
新田に響いた野球少年の悲鳴