今は昔、
「Hey、小十郎。敵の様子は?」
「申し訳ございません、霧が濃く、忍も多いようで、偵察の者が帰っていません」
「クソッ……こんな戦、早く終らせちまいたいんだがな」
奥州筆頭、伊達政宗は思わず舌打ちをする。
右目の片倉小十郎も、大分イライラしているようだ。
それもそのはず。
今回の戦では、伊達軍が圧倒的な有利。
だが運悪く、辺り一面濃い霧に覆われていて、身動きがとれないのだ。
誰もが士気を失い始めたその時、伊達軍に風が舞い込んだ。
「柏木春哉、只今戻りました」
伊達軍の忍でありながら、黒脛巾組に属さない、孤高の忍が帰還したのだ。
「遅かったなぁ、春哉」
「申し訳ありません、敵の忍を撒くのに少々てこずりまして」
「まぁいい。どうだった?」
政宗に、先程までいらついていた様子は皆無だ。
それもそのはず。
春哉が戻って来たということは、戦を始められる証だからだ。
「敵の大将は、1番奥に居ます。ただ、その周りを腹心が固めている様子」
「ハッ、それなら問題ねぇ。こっちにゃ、小十郎も成実もいる」
「柏木、この霧はどうにかならねぇのか」
「この霧は恐らく……一刻もしない内に晴れるでしょう」
「OK、晴れ始めたら突撃開始だ。お前ら、分かったな?」
「おぉーー!!」
この戦での勝利により、伊達政宗の名は全国に広まったのだった。
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