「どうですか?パスタは」

「ム、美味しいよ」

「ミーも同感ですー」

「ありがとうございます」

空いた皿を片付け、流しに置く。
そして、カウンターの方を向いた時、ふとある物の存在を思い出した。

「そういえば」

「あ?何だ」

「前に来た時、これ忘れていきましたよ」

そう言って巧が取り出したのは、黒い箱。
中を見るため、箱を開けたスクアーロは、思わず叫んだ。

「う゛ぉおい!!何て物忘れてやがる、クソボス!!」

「黙れカス」

「あらん?何を忘れて行ったの?」

「ヴァリアーの雲のリングですよ」

「あれー?って事はー、雲の守護者に選ばれたって事ですかー?」

「いいや、忘れただけでしょう」


会話を止め、洗い物を済ましてしまう。
一通りの作業を終え、再びヴァリアーの面々に視線を向けると、そこでは何やら話し合いが繰り広げられていた。

「皆さん、どうしました?」

「シシッ。雲のリングの使用者についてさ」

「候補者が居なくてよぉ」

「おい、巧。お前、どのくらい闘える」

「全然。ただのマスターに戦闘センスを求めないで下さいよ」

「ム、それもそうだね」

「あら、そうかしら?マスター、結構良い身体してると思うわよぉ?」

「ありがとうございます」

「う゛ぉおい、巧、使える武器はねぇのか」

「一般市民は、武器を使いませんよ」

どうやら、巧がマフィアでない事が抜け落ちている。
確かにこのカフェには、マフィア関係の人がよく集まる。

だからといって、自分はマフィアではないのに……

巧は、静かに溜め息をついた。


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