大人しい守護者


キィ……

いつも通りコーヒーカップを拭いていると、ドアが遠慮がちに開いた。

初めて来た人かな、と、巧はクッキーを用意する。

「……こんにちは」

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」

入って来たのは、女性。
綺麗な紫色の髪で、眼帯をしている。

「あの…ボス、いる?」

「ボス?」

「あ、ボンゴレの……」

「綱吉君か。ごめんね、今日は本当にいないよ」

「そう……」

巧は内心、とても驚いていた。
今までこのカフェに来たボンゴレの人間は、気性の荒い人が多かったからだ。
それに比べ、目の前にいる女性は、随分と落ち着いている。

「はじめまして、だよね?神崎巧と言います」

「私はクローム、クローム髑髏」

「君も大変だね。今日も綱吉君、逃走したのかい?」

巧は、クロームの前にクッキーとカフェラッテを置きながら、話し掛けた。
どうぞ、と微笑めば、恐る恐る食べる。

「ボスは、市内偵察に行くって」

「ははっ、流石だね。それで?」

「大量の書類を残して、いなくなったの」

「やるねぇ、綱吉君」

どうせまた、極寺君辺りを騙したのだろうと、思わず笑ってしまう。

「あの、ボスとはいつから知り合いなの?」

「んー…このカフェのマスターをやるようになってからかな」

「日本からじゃ、ないのね」

「えぇ。でも、住んでいた所は近いそうですよ」

「縁があるのね」

そう言って、少しだけクロームは笑った。
つられて、巧も笑う。


「また、来るね」

「はい、お待ちしております」

「ボスが来たら、早く帰るよう、伝えて下さい」

「えぇ、伝えます」

「それじゃあ」

そういうとクロームは、霧を纏い、消えた。
成る程、クロームは霧の守護者か。と、巧は食器を片付けながら呑気に考えていた。


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