イヤホン
2011/07/13 18:17
英語のリスニングに活用するなら、と買ってもらった音楽プレーヤーを手に、巧は部屋で寛いでいた。
本来あまりこういう物に興味を示さないが、いざ手に入ったら話は別。
様々な機能が充実したプレーヤーに巧は夢中である。
そこで面白くないのが瑞垣。
久々に海音寺からの誘いがなかった今日、一日暇な瑞垣は朝一で巧の家を訪ね、青波の相手をし、いざ姫さんの部屋に!と意気込んだはいいものの、当の本人はベッドの上で音楽プレーヤーに夢中で。
「なぁ姫さん、そろそろ構ってぇや」
「……えぇ」
「今日は一日暇やから、街まで行こうや」
「……えぇ」
「あかんわ姫さん、完璧スルーしとるやろ」
「……」
このやり取りを、30分の間に何度したことやら。
いざ取り上げようと手を伸ばしても、並外れた瞬発力で避けられてしまう。
しかも、暇だからとベッドに横になった瞬間、巧の手が伸びてきて太ももを抓る。
いい加減我慢の限界で、何だかプレーヤーに妬き始めた時、巧がクスリと笑い、スッと立ち上がった。
それを怪訝そうに見る瑞垣に、ニヤリと笑い掛け。
「音楽プレーヤーにヤキモチ妬く瑞垣さんも見れたし、そろそろデートにでも行きますか?」