(♂)

「そういえばお前、流星街出身だったんだっけ?」

ソファに全身を預けながらそう呟いた。俺の前に立ちながらこちらを見つめるフェイタンは全身を覆うような真っ暗な服を着ている。いつも思うのだが、暑くはないのだろうか。汗一つかかない姿を見ていると、こいつはロボットなんじゃないかと思えてくる。
なにも感じず、なにも思わないロボット。

「…それいつの話よ」
「う〜ん、いつ、かぁ…」

投げかけられた言葉の返答に困り、頬を掻く。いつ、と言われてもきっとあの頃と今の世界との時間の流れは違う。ハンター語が主流だった世界と、英語が公用語の今の世界。その頃の俺は今のように一般人ではなかったにしろ、フィエタンほど荒れてたってわけでもない。人殺しはしても虐殺はしなかった。あの頃の世界と比べ、人の尊厳やら命やらに厳しくなった今の世界の常識から考えれば、殺しも虐殺もどっちも同じもんだろうと言われるかもしれないけど。

「流星街出身の奴らはみーんな頭おかしいもんなぁ」
「違いないね」
「なーに当たり前のように返答してんだよ。皮肉に決まってんだろが」

しれっと言ってのけたあいつに呆れた視線を投げかける。やっぱり流星街出身者の頭はおかしい。一般の奴らにある頭の螺子が、一本も二本も抜け落ちてる。
痛くなってきた頭を解すために眉間を揉むと、手についた血がべったりと顔に付着して思わず眉を寄せる。

「ハハ、みともない姿ね」
「お前が持ってきた血だろーが」

全身血に染まって赤黒くなっているフェイタンの服から滴る血が床を汚す。それでもこいつを家にあげてやってる俺優しすぎない?まぁ、気がついたらいつの間にかこいつが家に侵入してるだけなんだけど。
こんな世界になってまで人殺しの癖抜けないなんて、こいつも馬鹿だよなぁ。

「捕まった時は面会行ってやるからな」
「そんなヘマするわけないね」

にやりと笑うフェイタンに、思わず頬が引き攣る。
こいつとつるんでたら、いつか共犯者とかに勘違いされそうで俺こわいんだけど?




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