瞼の裏側 「んっ」 「ふふ、くすぐったかったかい?」 目を細め此方を見つめるジョナサンに、「すこし」と小さく言葉をもらした。 彼の手にはお湯で濡らされたタオルが握られている。わたしの肌を清めていく真っ白な布と、肌を掠めるジョナサンの熱い手。 彼はわたしを誰にも触らせない。たとえメイドにだって。 食事も、着替えも、排泄も、わたしに関わるなにもかもを彼はしたがる。それが当然であるかのように。 「あぁ、」 ほうっと彼が感嘆の息をあげる。熱に浮かされた瞳をこちらに向けながら。 ジョナサンにくまなく触れられた肌はいやおうなしに熱を孕む。いいえ違う、彼はそうなるようにしているのだ。乳房を掠める指も、女性器を清めるためにと執拗に加えられる刺激も、すべて。 わたしは必死に目をつむり、時がすぎるのを待つ。 ジョナサンが無理やりわたしを暴こうとしたことはない。彼は優しいのだ。女神のように、どろどろに溶かした蜂蜜のように、あまいあまい毒のように。 だからわたしは彼の行いを甘んじて受け入れるし、ジョナサンには感謝している。うつくしい彼がわたしに割く時間は、途方もなく無駄なもので、けれどわたしを生かすためのものだと知っているから。 気持ちがそれを受け入れられるかは、なんとも言えないけれど。 「あ、」 閉じていた目を思わず開く。撫でるようなあまい刺激とは違い、脳髄を揺さぶるような感覚が背筋を駆け抜ける。目を開けた先には、ジョナサンの顔が目いっぱい視界に飛び込んできた。宇宙を詰め込んだみたいな綺麗な瞳が、今は欲に濡れている。 「ナマエ、」 「ん、」 ふってくる唇を受け入れる。それが当然かのように。 閉じた視界の先には、綺麗な月が浮かんでいた。 back |