騙されたかりそめ
どれくらいの時間がたったのだろう。
一体何度男に殴り、蹴られ、陵辱されたのか。
呻き苦しむ私を冷ややかな目で見つめる男は、しかしなにかに耐えるようにぎゅっと唇を引き結んでいることに気づいてはいるのか。
部屋の中は冷たい空気で満たされている。紫色に変色した醜い肌をてらす一つの光。何度も嘔吐したせいか口の中が苦い。
「わた、し、は、」
そう、私は誰なんだろう。二つの記憶が混ざり合ってなにがほんとうなのかが分からない。ここに来てからは紫の髪の男しか見ていないはずなのに、あの男に蹴られ殴られるたびに誰かの嫌悪に滲んだ顔が蘇る。
『天女サマ』
天女さまってなに?そんなの知らない。
『ねぇねぇ仙蔵!今日こそは一緒に街に行きましょう!』
『…しかし委員会が、』
『そんなのどうでもいいじゃない!私と街に行くほうがよっぽど楽しいわよ!』
『……、』
にっこり笑う女と冷め切った瞳の男。
あれ、この光景見たことある。
どこで?いつ?彼らはだれ?
『ねぇ仙蔵、私のこと、好き?』
『…えぇ、愛していますよ、天女サマ』